建設業の労災事例

化学工場の定期補修工事に使用する足場の組立て作業中に作業者が熱中症にかかる

   

【発生状況】

この災害は、化学工場の定期補修工事に使用する足場の組立て作業中に、熱中症にかかったものである。

災害が発生した日、朝礼が終わった後、被災者ら3名の作業者は、前日に組み立てた足場の手直しを行い、10時に休憩をとった。休憩後、足場材を、積載型トラッククレーンを用いて、200mほど離れた足場を組み立てる場所まで運搬し、昼食をとった。

昼の休憩後、足場の組立て作業を開始した。被災者は地上から足場材を組立て中の足場上にいる2名の作業者に手渡し、手渡された作業者らが共同で足場材を固定して足場を組み上げていった。

午後3時に休憩をとり、作業者らは適宜水分を補給していた。

足場の組立て作業を再開し、1時間ほど経過した頃、足場固定用クランプが不足してきたので、被災者は作業場所から100mほど離れた場所にクランプを取りに行った。その後、10分ほど経過した頃、構内道路を、ふらふら蛇行しながら歩き、構内道路上にかがみこんだ被災者を工場の従業員に目撃され、直ちに救急車で病院に搬送したが、7時間後に熱中症による多臓器不全で死亡した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 災害が発生した時期、35度を超える真夏日が続き、災害発生当日も最高気温37度、災害発生時の午後4時頃においても、気温が34.9度、湿度が70%というかなり高温多湿の気象状況であったこと。

2 作業場所が、日陰のない直射日光の強い場所であったこと。

3 保護帽のみの着用で、直射日光を遮るような対策が十分に講じられていなかったこと。

4 炎天下において、筋力を必要とする質量10kgから20kgの部材の運搬などの作業を連続して行っていたこと。

5 現場事務所内に飲料水が置かれていたものの、作業中に発汗が激しく水分および塩分の補給が必要であったが作業場所近くに飲料水および塩分を補給する設備が設けられていなかったこと。

6 事業者はもとより作業者全員が熱中症の危険や予防に関する知識が不足していたこと。

7 災害が発生した時期、連日連夜、30度を超える真夏日と25度を超える熱帯夜が続き、被災者は睡眠不足と疲労の蓄積など身体的な不調があったものと考えられること。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 屋外作業においては、可能な限り直射日光を遮ることのできる措置を講じること。

2 作業場所には、作業中に容易に水分および塩分を補給することのできる物品を備え付けること。

3 作業場所に近接する場所に、冷房室や日陰などの涼しい休憩場所を設けること。

4 作業場所に環境温度を評価する指標(WBGT)を把握するための環境温度計を設置し、作業中の温湿度の変化に対応した管理を行うこと。

5 気温条件、作業内容等を考慮して、休止時間や休憩時間の確保に努めること。

6 熱を吸収、保熱しやすい服装は避け、綿など吸湿性、通気性のよい生地で、明るい色調の服装にすること。

7 高温環境下における作業に従事する者に対し、熱中症に関する労働衛生教育を行うこと。また、熱中症にかかりやすい要因としての、二日酔い、睡眠不足、疲労の蓄積など夏バテしない体力作りに関する健康教育を実施すること。

8 作業中に、身体の異常を自覚し、または他の作業員の異常を目撃したときは、すぐに職長へ通報するように全作業員に周知すること。

【業種】

機械器具設置工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100841より一部抜粋

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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傾斜地に乗り上げたトラクター・ショベルが横転し、運転者が下敷きとなる

   

【発生状況】

この災害は、ゴルフ場敷地内において、ホイール式トラクター・ショベルが傾斜地を転落し、運転者が下敷きになったものである。
このゴルフ場では観葉植物育成ハウスを新設したが、水道の設備がなかったので、近くのクラブハウスからホースによって取水することが計画されていた。
災害発生当日、被災者らは、翌日に取水作業を実施することを決めた。被災者は大半の作業者の所定労働時間(午前6時から午後3時)以降に、その準備として11番ホール近くに放置されていたホース(約50m)2本を新設されたハウスまで運搬しておこうと考え、一人で作業を開始した。
ホースの運搬は砂の積み込みに使用するトラクター・ショベルを使用することにした。トラクター・ショベルを運転してホースの放置場所にむかったが、ホースの近くに行く斜面には草が生い茂っていた。まず、トラクター・ショベルで斜面の草を刈って通路を造ろうと斜面を運転しながら草刈を始めたとき、斜面にあった石に前輪を乗り上げたトラクター・ショベルが横転し、約14度ある斜面を転落した。
被災者はトラクター・ショベルの下敷きとなって死亡した。

【原因】

1 トラクター・ショベルに関し、その使用状況等の管理が不十分であったこと。

車両の定期検査(年次、月例、日常)が未実施であったり、車両のキーも長期持ち出し以外は管理者に報告せずに常に自由に持ち出せる状況であったり、事業場内の安全委員会等による作業者の不安全行動を未然に防ぐ措置が不十分であった。

2 トラクター・ショベルの左右安定度(12度)を上回る傾斜面で作業をしたこと。

傾斜面の傾斜角は、進行方向に対して左方向に14.1度、後方向に12.0度の下り勾配で、このトラクター・ショベルの安定度を上回り、さらに右前輪タイヤが石に乗り上げたことにより傾斜角が増大した。

3 作業者が十分に現場の状況を検討しないで、独自の判断で一人作業を行ったこと。

4 作業の指揮命令が不明瞭で、安全管理も不十分であったこと。

5 作業者の安全教育が不十分であったこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 トラクター・ショベルの使用状況等の管理を徹底すること。

特に、機械の管理については、定期検査(年次、月例、日常)の確実な実施や、車両の使用状況等を管理者が常時把握する。

2 作業計画を定め作業計画に従って作業を行うこと。

事前に作業現場の状況を調査し、一人作業はできるだけ排除する作業計画を定める。

3 機械の運転者に対し安全作業の励行について再教育すること。

運転作業の慣れによる災害防止のための危険予知訓練の実施や機械そのものの技術革新による構造、運転方法の変化等必要に応じ安全教育を実施する。

4 安全委員会を設置する等事業場内の安全衛生管理体制の整備を図るとともに、安全管理を徹底すること。

作業者の不安全行動を未然に防ぐ措置などについての規定を定め、関係労働者に周知徹底する。

【業種】

土地整理土木工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100853より抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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