天井クレーンでダクトをつり上げ作業中、フックブロックが落下し負傷
【労災発生状況】
この災害は、製鋼工場のダクト取替工事において発生したものである。
災害発生当日、水冷ダクトの取替え工事を受注したZ社では、発注者である製鋼工場の天井走行クレーン(つり上げ荷重25.6t)を借用して、古いダクトを撤去する計画であった。しかし、Z社が用意した玉掛けワイヤロープが長すぎ、撤去したダクトをクレーンでつり上げたまま移動するためには、クレーンの揚程が足りないことが分かった。
そこで、現場監督者を含めた関係者で対処方法を相談し、巻過防止装置の重錘取付けワイヤロープをリミットスイッチのレバーに数回巻きつけて短くし、揚程を長くして撤去作業を行った。
作業はまず、撤去するダクトをつり上げ運搬するため、玉掛け者が玉掛けし、クレーン運転者にフックブロックを巻き上げて移動するよう合図した。
次に運転者が、合図に従い、フックを巻上げ、横行および走行操作により所定の位置まで移動したが、このとき、巻上げレバーを0ノッチ(停止)に戻すべきところ1ノッチまでしか戻していなかったため、移動中もフックが徐々に上昇し、フックブロックの上面がクラブトロリーの下面に当たったが、巻過防止装置が作動しなかったため、巻上げワイヤロープが巻き切られて切断し、フックブロックおよびダクトが約14mの高さから落下した。
このとき、天井走行クレーンの下で作業方法の検討をしていた作業者2人は、上方で大きな音がしたのでその場から逃れようとしたものの、うち1人はフックブロックに激突されて負傷した。
天井走行クレーンの巻過防止装置は、重錘取付けワイヤロープをリミットスイッチのレバーに数回巻いて短くしても作動することは作業前に確認していたが、クレーンの使用中にレバーに巻いたワイヤロープが外れてレバーとリミットスイッチの間に挟まり、巻過防止装置が作動しない状態になっていた。また、このクレーンには、重錘式巻過防止装置(非常用)のほかに、内蔵式巻過防止装置(常用)が備えられていたが、内蔵式巻過防止装置は故障しており、ダクト取替工事後に修理されることになっていた。そのため、ダクト取替工事中は、内蔵式巻過防止装置の機能を解除したまま製鋼工場からZ社に貸与されていた。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 常用の内蔵式巻過防止装置が故障していたこと
巻上げワイヤロープが切断した天井走行クレーンには、重錘式巻過防止装置(非常用)のほかに内蔵式巻過防止装置(常用)が備えられていたが、内蔵式巻過防止装置が故障していたが、直ちに修理することなく、その機能を解除したまま工事業者に貸与した。
2 非常用巻過防止装置に手を加えて使用したこと
重錘式巻過防止装置(非常用)の重錘取付けワイヤロープをリミットスイッチのレバーに数回巻いて短くし、通常よりも高い位置までフックブロックを巻き上げられるように手を加えて使用した。
3 適切な作業方法の検討を行わなかったこと
つり上げたダクトの移動経路の変更、短い玉掛けワイヤロープへの交換等、適切な作業方法の検討を行わずに、非常用巻過防止装置に手を加えてフックブロックをより高い位置まで巻き上げられるようにする作業方法を採用した。
4 運転操作を誤ったこと
クレーン運転者が、天井走行クレーンの巻上げ操作レバーを0ノッチ(停止位置)に戻すべきところ、誤って1ノッチまでしか戻さなかったため、クレーンが走行中もフックブロックが上昇し続け、巻上げワイヤロープが巻き切られて切断した。
【対策】
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 クレーンの使用にあたっては、安全装置が正常に機能することを確認すること
巻過防止装置等の安全装置が故障しているクレーンについては、安全装置等が有効な状態に点検整備を完了するまで使用または貸与を禁止する。
2 安全装置に手を加えることを禁止すること
巻過防止装置等の安全装置は、その機能が損なわれるように手を加えたり、改造したりしてはならない。
3 作用方法を十分に検討すること
天井走行クレーンの揚程の確保が困難な場合には、玉掛けワイヤロープの取替え、玉掛け方法の変更、移動経路の変更等、安全に作業を行うことができる方法を十分に検討する。
4 安全なクレーンの操作を行わせること
天井走行クレーンの操作レバーは、誤操作を防止するために作業開始前に点検して調整・整備しておくとともに、クレーン運転士に正しい操作を行うよう教育訓練を行う。
【業種】
機械器具設置工事業
【被害者数】
休業者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
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車両積載形トラッククレーンで鋼板の荷卸作業中、クレーンが転倒し運転者が負傷
【発生状況】
この災害は、自動車道路の建設工事現場において、車両積載形トラッククレーンの荷台に積まれた鋼板を荷卸作業中にトラッククレーンが転倒し、作業者1人が被災したものである。
災害発生当日、3次下請会社の作業者A~Cの3人は、2次下請から、鋼板を資材置場から別の場所まで移動するよう指示を受け、0.5tの鋼板2枚、1.0tの鋼板1枚を車両積載形移動式トラッククレーン(つり上げ荷重2.3t)で荷台に積み込んだ。
そして、トラッククレーンを荷卸場所へ移動し、Aが運転席側のアウトリガーを、Bが助手席側のアウトリガーをそれぞれ引き出した。その後、職長のCが1.0tの鋼板に玉掛けし、Bが助手席側でクレーンを操作し、鋼板をつり上げて助手席側へ旋回した。
そのとき、トラッククレーンが助手席側に傾き始めたので、クレーンを操作していたBは荷台の後方へ逃げようとして段差から転落し基礎杭に衝突した。そこへ荷台に積まれたままの鋼板が崩れ落ちてきて、Bは基礎杭と鋼板との間にはさまれ、重傷を負った。
転倒したトラッククレーンには過負荷防止装置は装備されておらず、クレーンの安定性は荷重計から読み取る方式であった。
また、トラッククレーンを操作していたBは、クレーン特別教育を受講していたものの移動式クレーンにかかる運転資格はなかった。また、職長Cは小型移動式クレーン運転技能講習を修了していたが、AおよびBに指示するため、周囲の状況を確認しやすい荷台の上で作業していた。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 荷重計で荷重を確認しなかったこと
転倒したトラッククレーンには過負荷防止装置は装備されておらず、クレーンの安定性は荷重計から読み取る方式のものであったが、荷重計の針が振れて読み取りにくく、安全な荷重であることの確認が困難であった。
2 つり上げ荷重が過荷重であったこと
トラッククレーンのつり上げ荷重は、転倒する直前には、その作業半径から0.65t程度であったが、つり荷は1.0tであり、過荷重の状態であった。なお、積み込みは荷台後方より行ったので、過荷重状態でも限界転倒モーメントを超えることはなかった。
3 運転資格のない者にトラッククレーンの運転をさせたこと
職長Cは、トラッククレーンを運転資格のないBに運転させた。Bは、トラッククレーンの特性についての知識と技能に欠けていたため、災害の発生につながった。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 過荷重とならないよう荷重計を確認しながら作業を行うこと
荷重計を確認しながら作業を行うとともに、荷重計は読み取りやすいよう、日頃から点検・修理を行っておく。
2 荷の重さと作業半径に適したクレーンを使用すること
移動式クレーンを使用して重量物を運搬する場合には、荷の重さ、運搬経路、作業半径、つり上げの高さなどをあらかじめ検討し、過荷重にならないようなつり上げ能力を有するクレーンを配置する。また、過負荷防止装置を装備したクレーンを配置することも重要である。
3 移動式クレーンの運転は資格を有する者に行わせすること
職長は作業指示の際、無資格者に移動式クレーンを運転させないようにする。 また、元方事業者等が移動式クレーンの運転者の資格の有無の確認をすることも重要である。
【業種】
橋梁建設工事業
【被害者数】
休業者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
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