クレーン船を接岸中、係留ロープに激突された
【発生状況】
この災害は、クレーン船を接岸するために係留ロープをつなぐ作業中に発生したものである。
この工事は、港の航路浚渫(しゅんせつ)を行う工事であり、幅200mの航路を300mに拡張するもので、浚渫(しゅんせつ)区間は延900mであった。
災害発生当日、作業は、港から沖合約8.5km先に位置する島に設置してある移動式クレーン2台をクレーン船に乗せることであった。
曳船により引かれてきたクレーン船は、桟橋から約150m離れたところに錨を降ろした。
クレーン船に乗っていた作業員が、クレーン船に積まれていた小型船を海上に降ろし、アンカーロープを持って、島の桟橋左岸側の岩場近くまで移動して来た。
その小型船がくるのを見ていた被災者AとBは、岩場に打ち込まれたアンカー(くさび)に取り付けられている係留ロープとつなぐ作業の手伝いをしようと思い、2人は、島の桟橋から左岸側の岩場に降りて行った。
被災者2人は、小型船上の作業員からアンカーロープ(直径45mm)を受け取り、これに係留ロープ(直径22mm)をシャックルでつないだ。その直後、2人が桟橋の方に戻ろうとしたとき、2人の背後から係留ロープが飛んできて2人に激突した。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 クレーン船が潮流の加減によって流され、接続したときに岩の上から海中に垂れ下がっていた係留ロープが引っ張られて、急激に緊張して海中より一気に浮き上がり、潮流の方向に振れたため、その反動で被災者2人に激突したものと推定されること。
当日の天候は晴れで波は穏やかであったが、沖合の潮流は約1.5ノットの速さで右岸方向に流れていた。
2 係留ロープをつなぐ際に、潮流によって係留ロープが振れるおそれのある内角側で作業を行ったこと。
3 クレーン船が潮流の加減によって流されて係留ロープが振れることについて、誰も気付かなかったこと。
被災者2人は、被災当時、係留ロープに対して後向き(背後)の状態になっており、また、クレーン船と小型船にいた作業員ら3人とも被災者の動きを目撃していなかったとのことであった。
さらに桟橋上などにいた者からは、被災現場の死角になっていたため、誰も気付かなかった。
4 クレーン船の接岸作業等について明確な作業指示がなく、作業手順書も定められていなかったこと。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 クレーン船を使用する作業においては、クレーン船を係留する作業を伴うものであるので、このような作業に関する作業計画を作成すること。
2 この作業計画には、クレーン船のアンカーロープを接続する作業の安全な作業手順および接続する際の安全確認の方法、係留後の係留ロープの安定した緊張方法などを盛り込むこと。
3 この作業計画に基づいて、元請または下請の工事責任者の指示の下で、作業指揮者と関係作業員が、事前の作業打合せを行い、危険のポイントとその対策を確認すること。
4 実際の係留作業、接岸作業等に当たっては、係留ロープを接続する際の明確な安全作業手順に従って作業を行うとともに、作業指揮者は、潮流の方向と速さを確認して、作業者が係留ロープの振れる方向の内角側に立ち入らないよう作業監視と指示を徹底すること。
5 海上や岩場での作業は、たえず波の影響を受けてゆれ動く状況での作業が多いことから、常日頃より、それらの作業時の危険性についての作業員に対する安全教育を徹底しておくこと。
【業種】
港湾海岸工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
休業者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100787より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
杭打機の作業台上でスクリュウを誘導中、主フックが落下
【発生状況】
この災害は、杭打機(アースオーガー)の作業台上でスクリュウを誘導していたときに、浮きクレーンの主フックが落下して発生したものである。
この工事は、ふ頭の護岸に沿って、幅10m×長さ200mの桟橋を設置する工事であった。桟橋は上部工と下部工に分かれており、下部工から先に行われ、下部工は桟橋の基礎杭を打ち込む作業であった。
災害発生当日、杭打機を乗せた台船と浮きクレーンが岸壁の係留場に係留されていたので、午前10時頃から作業打合せが行われ、詳しい作業手順を確認した後、午前11時に作業が開始された。
まず、浮きクレーンの主フックでケーシングをつり上げ、杭打機の近くに垂直に立てた。一方、クレーンの補フックでスクリュウを吊り上げ、ケーシングの上端まで移動した。
被災者は、杭打機の作業台に乗り、つり上げられ、振れていたスクリュウをケーシングの穴に誘導していたとき、突然、主フックが下降して被災者に落下し、その反動で作業台から転落したが、安全帯を使用していたので空中にぶら下がる状態となった。
現場にいた同僚が救出し、救急車で病院に収容したが、死亡した。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 ケーシングをつっていた浮きクレーンの主フックがスクリュウに引っかかり、一旦持ち上げられてしまった後、スクリュウをケーシングの穴に誘導しているときに、その引っかかりが突然はずれ、被災者に落下したこと。
2 浮きクレーンの主フックにケーシングをつったまま、補フックにもスクリュウをつり上げるという2つの危険な玉掛け作業を同時に行ったこと。
3 浮きクレーンの主フックの玉掛けの状態を事前に十分確認することなく、また、主フックとスクリュウとの接触の有無など観察することなく、スクリュウをケーシングに誘導することのみに気をとられていたこと。
4 この一連の作業について、作業指揮や監視を行う者がおらず、被災者が玉掛けの合図者となって誘導を単独で行ったこと。
5 作業開始前に一応の作業手順の打合せを行ったとはいえ、これからも繰り返し行われる玉掛けや誘導の作業時の危険性についてのシュミレーションや安全作業方法の確認が不十分であったこと。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 浮きクレーンの主フックによりケーシングのつり上げ作業と補フックによるスクリュウのつり上げ作業を同時に行わない作業方法、作業手順を採用すること。
なお、主フックとスクリュウの接触、脱落等の危険性の有無について検討し、安全な作業方法、作業手順などを定めた作業計画を作成すること。
2 この作業計画に基づいて、毎日の作業開始前の安全ミーティングにおいて、必ず危険のポイントと安全作業のポイントを関係作業員全員にKY活動等により確認させること。
3 スクリュウをケーシングに誘導する場合には、作業開始前に必ず主フックの状況、特にスクリュウとの接触、脱落等が発生しうるかどうかを再度確認するとともに、作業全体を指揮する作業指揮者を配置し、その者の作業指揮の下に玉掛けの合図を行い、適切に誘導などを行うこと。
4 ケーシングの組立作業の手順についても、あらためて作業のプロセスにおける危険度評価を行い、その結果に基づいて、作業者全員に対する安全教育を行うこと。
【業種】
港湾海岸工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100788より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
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