建設業の労災事例

スプレーガンを用いた吹き付け塗装作業による肺の炎症

   

【労災概要】

自社作業場(倉庫)内において、被災者2名が建材見本を作成するため、養生フィルムを使って簡易的な塗装ブースを作り、スプレーガンを用いて吹きつけ塗装を行っていた。塗料はフッ素系ポリマーを含むものであった。両名とも徐々に動悸が起こる、喉に違和感を覚え咳が出始める等の症状が発生していたが、作業を継続したところ、後に肺が炎症を起こしていることが判明したもの。防毒マスクは使用していなかった。

【原因】

1 SDSの内容未確認

2 適切な呼吸用保護具未着用

3 リスクアセスメント未実施

4 作業標準書・マニュアル未作成

5 作業標準書・マニュアルの不備

6 安全衛生教育未実施

7 換気・排気装置未設置

8 換気不足

9 作業者の危険有害性認識不足

10 作業主任者・管理責任者等の危険有害性認識不足

【対策】

1 塗装作業時に全体換気装置等による換気を行い、かつ労働者に呼吸用保護具の着用を徹底させること。

2 労働者に対しSDSの周知を行うこと。

3 リスクアセスメントを行い、安全衛生に関する教育を徹底すること。

4 内燃機関を有する機械を使用する際には、当該機械を屋外に設置するか、換気をする等して作業場の通風をよくすること。

【業種】

建築設備工事業

【被害者数】

休業者数:2人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

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測量作業中、後退してきた不整地運搬車にひかれて死亡

   

【労災概要】

この災害は、圃(ほ)場整備工事において、測量作業を行っているときに発生したものである。

災害発生当日、現場には元請及び下請の作業者14名が集まり、午前8時から元請の現場責任者Aから作業内容について口頭で指示があった後、それぞれ担当に分かれ、測量、石拾い、基盤ならし、土砂の移動等の作業を開始した。

作業を開始した直後、Aは測量作業に必要な資材が不足していることに気づき、これを補充するため現場を離れた。そのとき、Aは、作業者Bに土砂の移動作業の準備を行うよう指示した。

Aから指示を受けたBは、当日は雨が降っていたので土砂の運搬はダンプトラックではなく不整地運搬車を使用した方が効率的に行えると考え、前日の作業で使用した不整地運搬車を隣の工区から後退(バック)で運転して現場工区まで進入させた。

このとき、石拾いをしていた作業者Cが大きな声をあげ、B自身も不整地運搬車が何かに乗り上げたように感じたので、不整地運搬車を停止し、状況を確認したところ、作業者Dが倒れ、不整地運搬車にひかれていた。Dは直ちに救出され、病院に搬送されたが、死亡した。

この工事現場では、不整地運搬車を方向転換するスペースがあったにもかかわらず、Bは、方向転換することをめんどうに思い後退で運転した。

また、Bは、不整地運搬車の運転業務の資格を持っておらず、不整地運搬車の鍵は現場事務所の壁にかけられており、誰でも自由に取ることができた。

この現場では、元請及び下請の作業者に対する安全衛生教育が十分には実施されておらず、工事の作業手順や作業方法を盛り込んだ作業計画書の内容は作業者に周知せず工事に着手していた。そのため、作業に必要な指示は、すべてAが現場で口頭で行っていた。

【原因】

この災害の原因として、次のようなことが考えられる。

1 無資格者による不整地運搬車の運転を防止するような管理がされていなかったこと

不整地運搬車の鍵が誰でも自由に取れるようになっており、その管理が適切に行われていなかった。また、関係作業者に不整地運搬車の無資格運転の禁止が徹底されていなかった。

2 不整地運搬車の運転者が、後方確認を十分に行うことなく後退で運転したこと

運転者が、現場の作業者の位置を確認しないまま、方向転換をめんどうに思い後退で現場に侵入した。

3 作業者に対し安全衛生教育を十分行わず、また、作業計画書の内容を作業者に周知しないまま工事に着手したこと

【対策】

同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 使用する不整地運搬車の無資格者による運転を防止するよう管理を徹底すること

無資格者による不整地運搬車の運転を禁止するとともに、不整地運搬車の運転責任者が鍵の管理を行い、無資格者には運転をさせないようにする。

なお、工事現場で使用する他の車両系建設機械についても建設機械ごとの運転責任者を定め、その者以外の者の運転を禁止することも必要である。

2 不整地運搬車の運転操作、作業方法を確認し、運転者に徹底すること

不整地運搬車の移動は、前進を原則とし、止むを得ず後退する場合は必ず後方確認を確実に行わせ、誘導者を配置する等、安全な作業方法を運転者に徹底する。

3 作業者に対し、予め十分な安全衛生教育を実施するとともに、工事の作業手順や作業方法を盛り込んだ作業計画書の内容を周知すること

作業者に対し、十分な安全衛生教育を実施するとともに、作業計画書の内容を周知し、毎日の作業打合せでは、作業計画書に基づいて安全な作業手順により作業を行うよう関係作業者全員に指示する。

【業種】

土地整理土木工事業

【被害者数】

死亡者数:1名

 

出典:厚生労働省ホームページ職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

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