建設業の労災事例

古紙再生プラントの新設工事で水路にマンホールの取付中サイロに転落し、死亡

   

【発生状況】

この災害は、古紙再生プラントの新設工事において発生したものである。

この古紙再生プラントは、環境団体が新聞紙等の古紙からパルプを再生するために設置するものであった。工事全体は躯体工事、製缶工事、電気工事、その他の設備工事に分かれていた。被災者の所属する会社はこのうち製缶工事を担当し、沈殿槽、水路、スクリュープレス・廃プラスチック選別機の製作と設置作業を請け負った。

当日、被災者は、同僚と二人で午前8時頃、現場に到着し、お互いの作業内容を確認したのち作業に着手した。

午前中は、二人で水路(ステンレス製で断面が300cm×126cmの箱型)のマンホール設置箇所にガス溶断機で丸く穴を開け、そこにマンホールの台座を設置して外周をアーク溶接により仮付けする作業を行った。

午後は、分かれて作業を行い、被災者は、アーク溶接によりマンホールの本溶接を担当し、同僚は前日に仮付けした水路のドレン管の本溶接を行った。午後3時から30分ほど二人で休憩し、また作業を続けた。

午後5時頃、同僚は、自分の作業が終了したので、現場から引き上げようとして被災者の作業箇所に行ったが見当たらなかった。

そこで、水路の別の箇所に設置されていたマンホールから水路の中に入って被災者を探した。水路につながっているサイロ(ステンレス製の直径350cm、高さ770cmの円筒形)の方に行ったところ、サイロ下に白い影が見えた。サイロの点検用マンホールを開けて見たところ、被災者がサイロ内に倒れていたので、この工事の元請の作業員らとサイロ内に入り、被災者を救出して人工呼吸等を施したが意識は回復せず、死亡した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 作業に関係のない場所に立ち入り、転落したこと

以前、被災者はサイロ関係の作業を行った経験があったので、サイロの構造に興味を抱き、サイロの方に水路内を移動していて、サイロに転落した。

なお、被災者が溶接作業を行っていた箇所は、マンホール用の穴が開けられていたので200lx程度の明るさがあった。しかし水路とサイロとの接続箇所では0~1lx程度で周辺がほとんど見えない状態であった。

2 作業計画が明確に定められていなかったこと

被災者の所属する会社は、受注した水路等をこの現場とは離れている工場で製作し、それを現地で組み立てるため作業員を工場から派遣した。全体の工期等については会社として承知はしていたものの、毎日の作業計画、手順等については作業員に任せ切りであった。

3 元請の統括管理が十分でなかったこと

この工事現場では、躯体工事を請け負った建設会社が特定元方事業者になっていたが、工期も当初の予定を過ぎて手直し工事や追加の工事を残すのみとなっていた。したがって、朝にミーティングを行ってはいたものの、被災者の作業について特段の指示も行っていなかった。

なお、被災者と同僚は、当日の朝のミーティングには参加していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業計画を定め作業管理を行うこと

自社で製作した機械設備等を設置する場合、製作の段階から機械設備等に詳しい者を据付現場に派遣することも多い。その場合であっても全体の作業計画と合わせて毎日の作業計画・手順を作成し、また、作業の進行状況を定期あるいは随時に報告させる。

また、現場での作業責任者を指名し、毎日の作業開始前に作業内容、作業手順、作業分担、危害防止に必要な安全帯や保護具の使用等について指示を行わせる。

なお、作業責任者は、定期あるいは随時に各作業者の作業箇所を巡視し、指示事項の履行状況の把握と必要な指示を行う。

2 安全衛生教育を十分に行うこと

同種作業の経験が長い者は、その作業に関する知識・技能は優れているものの、危害防止措置等については慣れで省略してしまうことが少なくない。熟練者に対しても、定期あるいは随時に安全衛生に関する教育訓練を実施する。

また、アーク溶接機を用いて行う溶接、溶断の作業については、特別教育を実施したうえで作業に従事させる。(安衛則第36条第3号)

なお、古紙再生プラント等で改修作業等を行う場合には、酸素欠乏危険あるいは硫化水素による危険を生ずることがあるので、その場合には作業者に特別教育を行うとともに、環境測定の実施等を行う。(安衛則第36条第26号、安衛法第65条・令第21条第9号)

3 元請は統括安全衛生管理を十分に行うこと

特定元方事業者は、輻輳した作業が一段落した工事終盤であっても、下請業者を含めた協議組織の設置と運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視等を確実に適切に実施する。(安衛法第30条)

【業種】

機械器具設置工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100929より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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繊維会社のボイラー取替工事中にスレート屋根を踏み抜き転落し死亡

   

【発生状況】

この災害は、繊維会社のボイラーの取替え工事で発生したものである。

被災者の所属する会社は、既設の炉筒煙管式ボイラー2基を撤去して小型多管式貫流ボイラーを設置する作業を3次下請けとして請け負った。

作業工程としては次のようなものであった。

[1] 既設ボイラー1基の煙突撤去

[2] ボイラー本体および煙管の解体撤去

[3] ボイラー基礎部の解体、清掃

[4] 新設ボイラーの基礎作り

[5] 小型ボイラー2基の設置

[6] 足場を組んで配管等の工事

[7] 足場の解体

[8] 電気工事

[9] 保温材等の取り付け

[10] 試運転

[11] もう1基の既設ボイラー解体

当日は作業の初日で工程のうち[1]から[3]までを行う予定であった。

当日は、繊維会社の担当課長、新設するボイラーメーカーの営業所長、1次下請の社長、下請け業者の作業者など計10名(被災者の会社からは、被災者のほか2名の作業者)が、午前8時30分頃からそれぞれの分担した作業を開始した。

午前9時30分頃、溶断した煙突を移動式クレーンでつり上げようとしたところ、煙突を固定していた屋根上の鉄板が溶接されていたためつり上げられなかった。

そこで、被災者と同僚で煙突の周囲の鉄板を溶断したが、まだ鉄板が引っかかっていたので屋根上に被災者が上り貫通部分をさらに細かく溶断することとした。

この作業は、ボイラー室屋根がスレートで葺かれていたので、屋根に歩み板を敷いて行った。

歩み板を敷く時にスレート屋根の一部を損傷したことを午前の休憩時間中に1次下請の社長に話したところ、本日中の修復を指示された。被災者と同僚は移動式クレーンによる煙突の撤去が終わった午後4時30分頃から屋根に上がって修復の方法を相談し、同僚が作業に必要な道具を取りに地上に戻った。被災者は歩み板を取るためにスレート屋根の上を歩いていたとき、スレート屋根を踏み抜き屋根上に残っていた鉄板(85cm×90cm×3cm、質量20kg)とともに5m下の床まで墜落した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 スレート屋根の踏み抜き防止措置が不十分であったこと

この災害は、既設の煙突の撤去作業において、スレート屋根の歩み板(長さ2m、幅25cm、厚さ4cm)を運搬中にスレート屋根を壊してしまったので、その修復の準備中に発生したものである。このスレート屋根は約40年前に葺かれた厚さ6.3mmのものでかなり老朽化していた。

このスレート屋根の修復を行う場合には、当然踏み抜きに対する防止措置を講ずる必要があったのに、被災者らはそれを行わなかった。

2 作業計画を定めずに作業に着手したこと

スレート屋根の修復作業は、歩み板の運搬中に屋根を壊したため当日、急に実施されたものである。このことは当初作業内容に予定されていなかったので十分な強度を有する歩み板を敷き詰めること等についての作業計画を定めずに着手した。

また、被災者らは、この作業について指示を受けることなく、作業を開始した。

3 元方事業者が統括管理を行わなかったこと

この現場における元請の責任者はボイラーメーカーの営業所長であるが、工事全体の安全に関する知識、経験が無かった。実際の作業は1次下請などに任せたままで、作業開始前の打ち合わせ、相互の連絡調整等の統括管理を実施していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業計画を明確に定め作業指示を行うこと

機械設備の据付工事等においては、しばしば次のような事態が発生する。

[1] 当初予定していた工期・時間が不足する

[2] 作業中に周辺設備との間に破損等の不具合が生ずる

[3] 当日予定した技能を有する作業員が確保できない

このような場合には、作業計画あるいは手順の変更を行う。また、破損箇所の修復作業が生じた場合には、その作業に必要な安全を確認した上で作業の着手を命ずる。

また、今回のような予定外の作業に対しては、作業指揮者を配置し、安全な作業の実施について指揮監督させる。

2 墜落危険場所の対策を十分に行うこと

スレート、木毛板等の材料で葺かれた屋根の上で作業を行う場合で、踏み抜きの危険がある場合には幅が30cm以上の歩み板を設け、防網を張る等の措置を講ずる。(安衛則第524条)

3 安全衛生教育を実施すること

高所で作業を行う者に対しては、あらかじめ墜落・転落危険とその防止対策について安全衛生教育を実施する。

とくに、安全な足場の組み立て方法、安全帯の使用方法、安全帯の取り付け設備の設置方法、防網の張り方、高所への昇降設備の設置方法、歩み板の設置方法について十分な教育訓練を行う。

4 統括安全衛生管理を実施すること

下請を使用して工事を行う元方事業者は、混在作業による災害防止等を図るため、協議組織の設置と運営、下請との連絡調整、作業箇所の巡視等の統括安全衛生管理を行う。(安衛法第30条)

また、その日の作業開始前に、安全のポイント等を指示する。

【業種】

機械器具設置工事業

【被害者数】

死亡者:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100930より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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