建設業の労災事例

河川堤防で草刈り作業中に熱中症となる

   

【発生状況】

この災害は、河川堤防上で草刈りの作業中に発生したものである。

堤防の草刈り作業は、3つの河川(総延長約5km、総面積約58,000m2)を約3か月かけて実施するもので、Y社は2次下請として仕事を請負っていた。

災害発生当日、Y社の被災者Aは、午前7時頃に同僚Bとともに現場に到着し、同じ2次下請Z社の作業員2名と一緒に1次下請X社の責任者から作業内容の説明を5分ほど受けた後、堤防上で前日までに刈り取られた草を竹ホウキでかき集める作業を行った。

昼食後、Aは、橋付近の堤防上で草刈り機(長さ180cm、質量6.5kg、鋸径22cm)を使用して草刈り作業を開始、途中、午後2時より15分間他の作業者らと高架橋下で休憩し、その後引き続いて橋付近の堤防上で草刈り作業を行った。

午後3時頃、Bが休憩を知らせにAの作業場所に行くと、Aは草刈り機を抱えたまま座り込むような格好で倒れていた。

そこで、抱き起こしたが、朦朧とした状態であったため、1次下請の現場責任者を呼んで救急車を手配した。

その間、Aを休憩場所の高架橋下の堤防上へ運んで寝かせるとともに、氷で冷やしたタオルでAの頭を冷やした。その後、病院に移送したが、熱中症のため同日中に死亡した。

なお、Aは前夜に社長宅を訪れて仕事と住居を求めたので当日から採用した者であった。

【原因】

この災害の原因としては、次のことが考えられる。

1 炎天下での作業における健康対策が不十分であったこと

当日、午後3時頃の気候は、気温が30℃を越え、湿度も50%を超える炎天下での屋外作業となっていた。

事業場としては、1時間の休憩、10リットルの氷入りのお茶2本、1.8リットル入りのスポーツドリンク3本を用意していたが、作業者個々の体調に合わせた管理等の面では対策が不十分であったと推定される。

2 被災者の健康状態の確認が不十分であったこと

被災者は前夜、社長宅を訪れて仕事と住居、食事を求めているが、これから推定すると無職で住居がなく、食事もほとんどとっていなかったため、かなり衰弱していて、炎天下での作業に耐えられる健康状態ではなかったと推定される。

3 安全衛生管理体制がなかったこと

この事業場は、小規模の事業であって、多くの場合下請として作業員を派遣するような体制で仕事を行っており、作業に関する指揮監督も上位の下請業者に任せきりで、労働者に関する安全衛生管理をほとんど実施していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 熱中症対策を十分に行うこと

夏期の高温環境下で筋肉労働に従事する者は、体温調節が乱されて熱中症(熱射病)にかかる危険性が高いので、できるだけ涼しい休憩場所の確保、適当な間隔の休憩の付与、水分・塩分の補給等を行うことが重要である。

また、日頃から労働日数や労働時間の削減、食欲増進、水分・塩分を食品の形で補給する食生活の改善、十分な睡眠時間の確保等に努めることが望ましい。

2 作業者の健康状態を把握すること

熱中症等のおそれのある夏期の炎天下の作業などに従事させる者に対しては、雇い入れ時および定期健康診断による健康状態の把握を行うほか、その日の作業開始前に体調の確認等を必ず実施する。

3 安全衛生管理を実施すること

事業者は、労働者の安全衛生を確保するために、担当者の選任、定期健康診断等の健康管理の実施、熱中症等に関する安全衛生教育の実施、作業場所の巡視と適切な指示などを実施する。

 

【業種】

その他の土木工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100741より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 - 函館の建設業, 旭川の建設業, 札幌の建設業 , , , , , , , , , , , , ,

地下60mの送水管内の清掃作業中、モルタルの硬化熱で熱中症となる

   

【発生状況】

この災害は、上水道を布設する工事において送水管の清掃作業中に発生したものである。

この工事は、浄水場から供給地点までの総延長12kmの送水管(内径800mm)を布設するもので、内径約2mのシールドトンネルを泥水加圧シールド工法で掘削し、その中に送水管を入れて接合し、内径約2mのシールドとの空間にエアーモルタル(セメント、砂、混練水、気泡剤を混ぜ合わせたもの)を充填するものである。

災害発生前日までには、立坑から約1kmまでの送水管の据付けが完了し、そのうち約900mまではエアーモルタルの充填が完了していたが、豪雨により川が増水して他工区のドレン用配水管から川の水が流れ込み送水管内が汚れたので、いったん布設工事を中断して送水管内の清掃作業を行うことになった。

災害発生当日、9名の作業員は、台車に乗って一列になって大型スポンジと洗車用ブラシを使用して管内に溜まった水を立坑側へかき出す清掃作業を開始した。

作業を開始した当初は、管内はひんやりしていたが、1時間ほど経過した頃から送水管内は打設されたエアーモルタルの硬化熱によりの気温が上昇しはじめ、前に進むに従って異常な暑さとなった。

現場責任者は、立坑側の送水管の出口に向けて脱出するよう指示し、7名は自力で送水管から脱出できたが、2名が管内で動けなくなり、他の作業員が送水管の出口から80m~100m付近で動けなくなっていた2名を救出した。

その後、2名を救急車で病院に移送し治療を受けたが、1名は熱中症により同日夜に死亡し、他の1名は熱中症により休業災害となった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 送水管内が高熱になっていたこと

被災者らは内径800mmという狭い送水管内で作業を行っていたが、この送水管の周囲は前日にエアーモルタルが打設されたことにより、その硬化熱により全体として30℃以上、場所によっては50℃を超える状態となっていた。

2 作業計画を作成せずに作業を命じたこと

被災者らが行った清掃作業は、狭い送水管の中を1kmも進むという状態で、しかもエアーモルタルの硬化熱で管内の温度が上昇していることがある程度想定されたのに作業計画を作成せずに作業を命じた。

3 熱中症についての検討および教育を実施していなかったこと

会社は、高温度の環境下での作業で熱中症になるおそれがあったのにその検討を行わず、現場責任者にその意識がなく、作業者に対する教育も実施していなかった。

4 発注を含めた総合的な安全衛生管理を実施していなかったこと

この工事では、複数の特定元方事業者が作業を行っていたにもかかわらず、発注者を含めて事前に相互の十分な打合わせを行っていなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業計画を定めること

土木工事等を行う場合には、発注条件に沿って定常的な作業を行う場合はもちろんのこと、突発的な事故等の修復のための非定常作業において想定される危険および人体に対する影響についてあらかじめ検討し、その対策を盛り込んだ作業計画を作成するとともに、関係作業者に周知徹底する。

2 熱中症に関する教育を実施すること

屋外で直射日光を浴びて行う作業、高温環境下で筋肉労働等を行う作業等に従事する責任者および作業者に対しては、あらかじめ熱中症の危険およびその対策(作業時間の短縮、休憩の付与、塩分・水分の補給等)について教育を実施する。

3 発注者を含む総合的な安全衛生管理を実施すること

一つの場所において複数の元方事業者が工事を施工する場合には、全体を統括管理する特定元方事業者を指名し、安衛法第30条に定める統括安全衛生管理を確実に実施させる。

また、発注者は、混在作業による危険防止のため統括安全衛生管理義務者の指名等を行うとともに、突発的に対応すべき事態が生じた場合には、その修復作業等に関して施工業者と綿密な協議、指導を実施する。

 

【業種】

上下水道工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

休業者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100743より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

 - 函館の建設業, 旭川の建設業, 札幌の建設業 , , , , , , , , , , , , , ,