建設業の労災事例

工場屋根に換気扇取付け工事中、スレートを踏み抜き墜落

   

【労災発生状況】

この災害は、工場の屋根に換気扇を取り付ける工事中に発生したものである。工場の屋根は、中央部の高さ13mで軒先の高さ9mまでの傾斜があり、厚さ6mmの波型スレートで葺かれていた。

換気扇取付け位置は屋根の中央付近であったため、作業者が屋根上を移動するために、前日に、幅30cm、長さ4mと1.5mの歩み板20枚を屋根上に敷き通路を確保していた。

災害発生当日は、工事を請け負ったZ社の作業者A~Cの3人が朝8時頃から屋根に登り作業していたが、3時間ほどで換気扇の取付け作業が終了したため、通路に使用していた歩み板を南側の軒先に集め、Bが屋根上で玉掛けを行い、Cが地上に降りてトラッククレーンの操作をして、全ての歩み板をトラックに回収した。このときAは換気扇の試運転状況を確認していた。

歩み板の撤去と換気扇の試運転が終了し、Aが地上に降りようと昇降用のはしごをかけていた工場東側へスレート屋根上を移動したところ、屋根のスレートを踏み抜き、12m下の床に墜落した。Aはすぐに病院に運ばれたが死亡した。

作業開始前に行われたミーティングでは、Z社の現場責任者Dから「スレート上は鉄骨の梁に固定されているフックの上を歩く」、「作業はあわてずに行う」等の注意があったが、歩み板の撤去方法についての指示はなかった。

また、現場では、屋根上の歩み板撤去後にスレートの踏抜きによる危険を回避できる安全な通路を確保していなかったほか、スレートを踏み抜いた際に作業者が床面に激突することを防止するために防網を工場内の屋根の下に張る、作業者に安全帯を使用させる等の墜落防止措置を講じていなかった。

さらに、Z社では、工事が短時間で終わることや以前にもスレート葺きの屋根上で同様の工事を行っていたことから、工事計画書を作成していなかった。

【原因】

この災害の原因としては次のことが考えられる。

1 作業者が屋根上で作業しているにもかかわらず歩み板を撤去し、スレートの踏み抜きによる墜落災害を防止するための措置を講じていなかったこと

作業者が屋根上で作業しているにもかかわらず歩み板を撤去し、しかも工場内の屋根下に防網を張る、作業者に安全帯を使用させる等の、作業者がスレートを踏み抜いた場合に備えた墜落防止措置を講じていなかった。

2 安全な作業を行うための工事計画書を作成せず、作業者に具体的な作業手順を指示しなかったこと

Z社では、工事の開始前にスレートの踏み抜き等による墜落災害を防止するための安全な作業方法を定めた工事計画書を作成しなかった。また、その日の作業開始前のミーティングにおいても、歩み板の撤去の方法等を指示しなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。

1 歩み板の撤去後に作業者がスレート上を移動しなくても済むようにすること
スレート上での工事終了後、歩み板を回収する位置と作業者が屋根から下りる位置を同一とし、作業者が歩み板を撤去した後の屋根を移動することがないようにする。また、踏み抜きのおそれがある場合は、歩み板のみならず、防網を屋根の下に張る、作業者に安全帯を使用させる等の措置を講じることが必要である。

2 安全な作業を行うための工事計画書を作成し、作業者に具体的な作業手順を指示すること
工事の開始前に安全な作業方法を定めた工事計画書を作成し、その日の作業開始前のミーティングにおいても歩み板の撤去の方法等、具体的な作業手順を作業者に指示する。

【業種】

その他の建設工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp より一部抜粋(労働災害事例No.101116)

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の 札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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屋外プラントの床を溶断作業中、近くの作業者が金属ヒュームを吸って中毒になる

   

【労災発生状況】

この災害は、ガラス工場の屋外プラントの床補修工事において発生したものである。
災害発生当日、作業者A~Cの3人は、ガラス工場の屋外プラントの床をアセチレンガスで溶断し、撤去する作業を行っていた。
作業は、まずBとCが鉄製の床を撤去しやすい大きさにアセチレン溶断し、それをAが撤去・はつり作業を行うというもので、朝から作業を開始し、午後も作業を継続した。
午後の作業を開始して間もなく、Aは体調不良を覚えたため、工場内の診療所に行ったところヒューム熱と診断され治療を受けたが、回復しなかったので、近くの病院に搬送され、さらに治療を受けた。
災害が発生した場所は壁のない屋外プラントであったが、アセチレン溶断を行っていたBおよびCは呼吸用保護具としてエアラインマスクを使用していたのに対し、Aは防毒マスクを使用し、しかも暑いため作業中に何度か着脱を行っていた。
工場では、屋外プラントの床補修工事を行うに当たり、アセチレン溶断で発生する有害ガスや金属ヒュームへの対策を含めた作業計画書を作成していなかった。また、関係作業者に対し、安全衛生教育を実施していなかったため、アセチレン溶断作業の危険有害性についての作業者の認識が乏しかった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 有害ガスや金属ヒュームが発生する近くで適切な保護具を使用しないで作業していたこと

アセチレン溶断は、有害ガス、金属ヒューム等が発生する有害な作業であるにも関わらず、近くいたAはエアラインマスクを使用しないで、防毒マスクを使用して作業を行っていた。さらに、保護具の着用方法、効果に関しての教育・訓練が行われていなかったためAは、ときどき防毒マスクを外して作業を行っていた。

2 作業計画書を作成していなかったこと

作業における安全衛生対策等を含めた作業計画書を作成していなかった。

3 安全衛生教育を実施していなかったこと

作業者に対し安全衛生教育を実施していないため、作業者がアセチレン溶断作業の危険有害性に関する十分な認識がなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 適切な保護具を使用させること

アセチレン溶断作業を行わせる場合には、有害ガス、金属ヒューム等の発生による健康障害を防止するため、作業者にエアラインマスクを使用させる。 また、呼吸用保護具については、正しい装着方法とともに、作業中に外さないこと、外す場合には作業場所の風上等の安全な場所で外すこと等について作業者に教育、訓練を行い徹底する。

2 作業計画書を作成すること

有害ガス、金属ヒューム等が発生するアセチレン溶断作業を行う際は、安全な作業を行うための作業計画書を作成し、その内容を関係作業者に徹底する。

3 安全衛生教育を実施すること

関係作業者に対し、アセチレン溶断作業の危険有害性と保護具の使用等、その対策について十分な安全衛生教育を行う。

【業種】

その他の建築工事業

【被害者数】

休業者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

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