解体したクライミングクレーンの部材の巻き下げ中、ジブクレーンのボルトが破断しクレーンが倒壊
【発生状況】
本災害は、解体されたクライミングクレーンの部材をジブクレーンでつり上げ後、巻き下げを開始したところ、ジブクレーンの旋回ベアリングを取り付けているボルトが破断し、旋回フレームが倒壊したものである。
災害当日は、31階建ビルの建築工事現場の屋上で工事に使用したクライミングクレーンをジブクレーン(定格荷重1t)によって小分け・解体作業を行っているところであった。クライミングクレーンに取り付けられていた巻上げ装置の一部分(1.44t)をつり上げ後、地上に下ろすために巻き下げを開始したところ、ジブクレーンの旋回ベアリングを取り付けているボルトが次々と破断し、旋回ベアリングから旋回フレームの後部が浮き上がり、ジブクレーン上部全体が倒壊し、荷とともに約140m下の地上に落下した。その際に、建物の窓に部材の一部が接触してガラスが割れ、飛散した。このガラスにより、地上のバリケードの外側にいた作業者Aが負傷したものである。
旋回ベアリングは12本のボルトで固定されるべきものが、2本欠落しており、さらに10本のうち2本のボルトはナット部分が半分程度の長さであった。ボルトが欠落していた2個所は旋回フレームのボックス構造部であり、点検時に見落としやすい構造であったため、現場に設置する前の出庫時検査の際、ボルトが2本不足していることを確認できなかった。
また、作業指揮者Bはクライミングクレーン重量表により部材重量を目安として解体していたが、巻上装置取り付けフレームの記載はなかった。なお、Bはクレーン組立・解体作業指揮者に対する安全教育を受講していなかった。
【原因】
災害の発生原因として、次のようなことが考えられる。
1 旋回ベアリングを取り付けるボルトの本数が不足していたこと
本来は12本のボルトで固定されるべきものが、10本であったことに加え、現場に設置する前の出庫時検査の際にもボルトが2本不足していることを確認できなかったことから、ボルトにかかる荷重が破断荷重を超えた。
2 クライミングクレーン重量表にすべての部材の重量が記載されていなかったこと
クライミングクレーン重量表に巻上装置取り付けフレームの記載がなく、作業指揮者Bがフレームの重量を考慮しないまま巻上装置をつり上げたため、過荷重となった。
3 作業指揮者に必要な安全教育を受講していなかったこと
作業指揮者Bはクレーン組立・解体作業指揮者に対する安全教育を受講していなかったことから、必要な知識が不足したまま作業指揮を行っていた。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 旋回ベアリングは決められたボルト数にて固定すること
旋回ベアリングを固定するボルトは、決められた本数で固定するとともに、現場に設置する前の出庫時や設置後の検査で確認をする。
2 クライミングクレーンの解体は取り付け最小分割になるように接続部を取り外すこと
作業指揮者は、あらかじめクライミングクレーン重量表により部材の重量がジブクレーンの定格荷重を超えていないことを確認するとともに、解体に当たっては最小分割となるようにすること。また、重量表に記載されていない部材があった場合には、その重量を確認してから下ろすことが重要である。
3 作業指揮者にクレーン組立・解体作業指揮者に対する安全教育を受講させること
作業指揮者には、安全衛生教育推進要綱に基づく教育としてクレーン組立・解体作業指揮者に対する安全教育等を受講させ、当該作業の危険防止のため十分な検討を行わせることが必要である。
【業種】
鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事
【被害者数】
なし
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101016より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
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仮設桟橋上でクローラクレーンを用いて荷のつり上げ作業中、荷振れを起こし、その反動で転落
【労災発生状況】
この災害は、橋梁建設工事において、下請業者の作業者が仮設桟橋上でクローラクレーンを用いて荷のつり上げ作業を行っていたところ、操作方法を誤り、荷振れを起こしたため、その反動でクレーンが約8mの高さから作業者とともに転落したものである。
災害発生当日は、クローラクレーンを用いて、掘削作業に使用するケーシングパイプのつり上げ作業が行われていた。ケーシングパイプはその重量とクレーンの定格荷重との関係で、1本ずつつり上げることが事前の元請と下請業者との打合せで確認されていたが、当日は、作業時間を短縮するため下請業者の判断でケーシングパイプを2本つなげた状態で、つり上げ作業を行った。そのときの荷の重さは、定格荷重に近かったため、過負荷防止装置が作動し、連続的な警告音と黄色のランプが点滅していた。
そこでクレーンの運転者は、荷をつったままジブを急激に起こした。そのため荷振れをおこし、その反動で仮設桟橋から、クローラクレーンとともに墜落したものである。
なお、当日の作業方法の変更については、下請業者から元請に伝えられていなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 荷の重量やクレーンの性能を考慮せずに下請業者の判断で作業工程を変更したこと
作業工程は、ケーシングパイプの重量、クレーンの定格荷重、作業半径等を考慮して、元請と下請業者との事前の打合せにより決定されていたが、これを下請業者が独断で作業工程を変更した結果、定格荷重に近い荷を、無理につり上げる作業となった。
2 作業工程の変更について元請に伝えられていなかったこと
作業工程の変更等の作業についての情報が下請業者から元請に伝えられていない等、安全管理体制に問題があった。
3 作業者がクレーンの急激な操作を行ったこと
過負荷防止装置が作動した際、クレーンの運転者がとっさに判断を誤り、クレーンのジブを急に起伏させたため、クレーンを仮設桟橋から転倒に至らしめるような、大きな荷振れが生じた。 作業工程は、元請と下請業者との打合せが行われた際に決定されていたが、当該作業を実際に担当する下請のみの判断で、作業省略等の変更が行われた結果、安全面での配慮がなされなかった。
【対策】
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 安全に作業できるよう計画された作業工程を変更しないこと
クレーン作業の工程は、作業の内容、荷の重量、クレーンの定格荷重、作業半径などを考慮して、安全に作業が行えるよう計画されているので、安全に配慮することなく変更しないようにする。また、下請業者はその内容に忠実に従って作業を行うこと。また、やむを得ない変更が必要な場合は、元請に連絡を取り、相談をした上で変更する。
2 安全管理体制を整備すること
元請と下請業者の連絡・協力体制を強固なものとし、現場で生じた問題点の早期解決を図ることができる、あるいはその情報伝達機能を有する安全管理体制を整えること。
3 クレーンの運転は、急激な操作を行わないようにすること
特に、過負荷防止装置が作動した際には、あわてないで、かつ速やかに、荷のつり上げ作業の中止をすることが重要である。
【業種】
橋梁建設工事業
【被害者数】
不休者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101018より一部抜粋
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