建設業の労災事例

下水道管の敷設工事でマンホール内にくわえ煙草で入り爆発し、負傷

   

【労災発生状況】

この災害は、下水道管の新設工事現場において発生したものである。

この工事は、全長約900mにわたり下水道管を敷設するもので、被災者の所属する会社は2次の下請けとして掘削、下水道管の敷設等の作業を請け負っていた。

当日、被災者は、同僚3名とともに工事現場に到着して午前8時頃から作業を開始した。被災者はオープンカットしたところに敷設された下水道管に一定の間隔で設けられているマンホール(30カ所ある)のうちNo.27の中に入り、マンホールの底部の汚水等を流すインバート(溝)を造る作業に従事した。

当日は、まず地上でコンクリートモルタルを練った。その後、マンホール(直径64cm、深さ2.05m)の蓋を開けて中の状況を確認してからバケツで5杯程度のモルタルをマンホールの中に入れ、自分も中に入って底部をヘラで均した。

その後、コテなどの道具を取るためマンホールを出て、道具を用意し再度マンホールの中に入ろうとしたが、入る直前に煙草に火をつけてくわえ煙草のままNo.27の中に入った。

午前9時10分頃、被災者は、マンホールの底部に到着して作業のためしゃがんだところ、突然爆発し、爆発音が3回ほどして両隣のNo.26とNo.28のマンホールの蓋が数十メートルも吹き飛んだ。

爆発後、被災者は、自力でマンホールから脱出して近くの民家の水道で顔を洗うなど応急措置を行ったのち救急車で病院に移送され加療したが、顔面熱傷のため全治4週間の負傷となった。

なお、被災者および被災者にマンホールの上から声をかけた同僚の話によると、当日はマンホールの中で特にガス等の臭いはしなかった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 近くのガス管からプロパンガスが漏洩していたこと

事故後に爆発のあったNo.27マンホールの中の環境測定を行ったところ、プロパン94%、エタンおよびエチレン1%、イソブタン1%のガス成分が検出された。

しかし、爆発のあったNo.27マンホールの近くにはガス管が配置されていなかった。調査したところ、一連の下水道管設置工事でNo.27マンホールからはかなり離れた場所を機体質量2.5tのドラグショベルで掘削中にガス管にバケットが当たり、約2cmの亀裂を生じさせていた。

そのときは、破損した部分をテープで巻き、さらにコーキングで固める応急措置を2重に施したところ臭いが止まったので、そのまま埋め戻していた。しかしこの部分からガスが漏洩し、土の中を通って敷設中の下水道管に入り、この管を通じてNo.27マンホールまで達したものと推定される。

2 ガス管を破損した情報を報告していなかったこと

ガス管を破損した作業者は一次下請けの現場責任者にその旨伝えたが、責任者は「補修したのならよいだろう」といって、元請等にその情報を報告しなかった。

さらに、ガス漏れを起こしたガス管付近にあったマンホールの土止め支保工解体時にも人糞のような臭いがした。そこで釘でガス管に穴を開けたが臭いがしなかったのでその部分に接合材を塗り埋め戻しをしていたが、そのことは誰にも報告していなかった。

3 作業開始前に打ち合わせを行わなかったこと

当日作業現場には、元請の責任者1名、一次下請けの作業者2名、被災者の会社から4名、ガードマン1名がいた。作業員たちは何カ月も続いた繰り返しの作業であったことから、当日朝作業開始前の打ち合わせを行うこともなく、直ちに作業に着手していた。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 埋設物による危害防止措置を行うこと

明り掘削作業等により露出したガス管の損壊により労働者に危害を及ぼすことを防止するためには、作業指揮者を指名してガス管の補強、移設等の措置を必ず行う。なお、掘削機械等によりガス管の損傷のおそれがあるときには、これらの機械を使用しない。(安衛則第362、363条)

また、ガス管を損傷した場合には、その状況および補修の結果についても元請に報告し、元請は関係する請負事業者に情報として提供するとともに、危害防止策を指導する。

2 作業開始前打ち合わせを行うこと

その日の作業を開始する前には、作業の内容、作業分担はもちろんのこと作業に伴う危険有害箇所等とその対応策について危険予知活動(KYT)などを実施する。

また、ガス管付近での作業、ガス漏れ等の情報等がある場合には、作業開始前にその対応策を関係作業者に徹底するとともに、必要に応じてガス検知を行う。

3 安全教育等の安全衛生管理を実施すること

下水道管の埋設作業等に従事する作業者に対しては、必ず土砂崩壊、土止め支保工の崩壊等の防止に関する教育を行う。現場付近に埋設されているガス管からのガスの漏洩危険とその防護措置、ガス検知の方法等について安全衛生教育を実施する。

なお、点火源となる煙草については、安全な所に喫煙所を設け、現場内での喫煙を厳禁する。(安衛則第291条)

また、元方事業者は、関係する請負事業者を含めた協議組織の設置・運営、作業間の連絡調整、関係請負人が行う安全衛生教育等に対する指導援助を行う。(安衛法第30条)

【業種】

上下水道工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100920より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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空港のボーディングブリッジの点検中に墜落し死亡

   

【発生状況】

この災害は、空港のボーディングブリッジの定期点検中に発生したものである。

当該空港の各スポットに設置されている全てのボーディングブリッジ(旅客搭乗橋)は、3か月ごとに定期点検されていて、その作業は深夜に行われていた。

当日午後8時30分に、被災者ら作業者4名は、空港から点検作業を受託した会社に集合し、作業責任者から当日の作業内容についての指示が次のようになされた。

(1) 国際線のメンテナンス作業を開始する。

(2) 被災者と同僚1名が電線ケーブルの修正作業を行う。

(3) 他の会社の2名はブリッジのトンネル部分とヘッドカーテンのグリスアップを行う。

この後、会社から現場となる空港に移動し午後10時過ぎに到着した。

空港へ到着後、メンテナンスの対象となるスポットのボーディングブリッジを見ながら再度当日の作業内容と保護具の着用確認を行って作業に着手し、0時までそれぞれの作業を遂行した。

翌日となる0時から1時まで休憩をとった。その後、被災者はボーディングブリッジ先端のブリッジヘッドと呼んでいる部分にあるローラーカーテンのカーテン巻取り軸ベアリングへグリスアップ(給脂)する作業の準備に取りかかった。

1時40分頃、被災者はグリスアップ作業の準備を行っていた。同僚は後ろ向きになる形でボーディングブリッジの走行タイヤブレーキの点検作業を行っていた。突然背後で「ドサッ」という音がしたので振り返ってみると、被災者がボーディングブリッジの右側に寄せてある移動式足場の昇降部のたもとに倒れていた。

その後、被災者は、救急車で病院に移送され入院していたが、翌日に容態が悪化して意識不明となり、2週間後に死亡した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 足場の最上段から墜落したこと

目撃者がいないため被災者の直前の作業の内容は不明であるが、

(1) 被災者が病院で「足場から降りようとして振り向いたときにバランスを崩して墜落した」と話していた。

(2) ローラーカーテンのカーテン巻き取り軸を囲う扉が開放され、そこに移動式足場が横づけされていた。

(3) 3か月点検の項目にはカーテン巻き取り軸のバネの損傷具合を目視する項目があった。

これらの状況から判断すると、まず被災者は移動式足場の最上段に上ってカーテン巻き取り軸を囲う扉を開けて中の状態を目視点検した。この後、足場の下に降りようとしたときに、足場最上段(2.2mの高さ)の手すりの無い部分から墜落したものと推定される。

なお、移動式足場は、航空会社所有のもので昇降路の両側および最上段の両側には、高さが90cm(中さん付き)の手すりが取り付けられていたが、最上段の1方向には手すりが設けられていなかった。

2 作業手順の打ち合わせが不十分であったこと

作業開始前に、その日の作業内容の打ち合わせを行っていたが、作業に使用する機器材およびその安全性、安全帯の準備等についての打ち合わせや指示はなかった。

なお、移動用足場は、航空会社の所有で本来航空機の点検に使用されているものであったが、以前よりボーディングブリッジのメンテナンスを行うときには借用していた。

3 指揮命令系統が不明確であったこと

このメンテナンス作業は、当日の作業責任者の会社が請け負い、被災者の会社および他の2社が下請けとして入っている形であった。当日も2社から社長がきて作業を行うなど作業指揮命令系統等についても明確でないまま作業が継続されていた。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業用足場の安全を確保すること

高所で作業を行う場合には、墜落・転落を防止するための安全な足場(作業床)を確保することが必要である。移動式足場等を使用する場合には昇降時および最上段での作業時に転落等のおそれがないように手すり等を完備したものを使用する。(安衛則第518~521条)

なお、移動式足場等は、使用する会社がその作業に専用のものとして製作したものが望ましい。やむを得ず他の所有者のものを借用する場合には、転落等を防止するための手すり措置等が完備していることを確認し、不適切なものは使用しない。

2 安全衛生教育を実施すること

高所で作業を行う者に対しては、安全足場の確保、やむをえない場合の安全帯・保護帽など保護具の使用、移動式足場の安全措置等について繰り返して安全衛生教育を実施する。

また、作業の責任者は、これらについて作業開始前に明確に指示するとともに、その履行状況を確認する。

3 作業計画と指揮命令系統を明確にすること

安全な作業を遂行するためには、安全な作業計画、作業方法・手順を明確に指示するとともに、作業および安全衛生についての指揮命令系統を明確にしておく必要がある。

そのためには、作業者の安全衛生を確保する義務は直接の事業者にあるのか、あるいは請負契約をした事業者にあるのか等を明確にし、その責任者が安全衛生を確保するための各種の措置を確実に履行する。

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100928より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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