護岸工事で使用した型わくの解体作業中、法面の地山からコンクリートの塊が落下
【労災概要】
この災害は、護岸工事に使用した型枠の解体を護岸構築のために掘削した法面との間で実施していた作業者が、地山から落下してきたコンクリートの塊の下敷きとなったものである。
この工事は、道路の海側を約3.4mの深さに掘削し、海と道路の間に海岸線に沿って延長16mの護岸工事(波返し)を構築するものであり、被災者は専ら型わくの組立て、解体を行う第2次下請けの作業者として作業に従事していた。
当日、被災者は、現場責任者Aなどとともに型わくの解体作業に従事した。
分担は、現場責任者Aと被災者及び同僚Bは波返しと法面の間において、同僚Cは波返しを挟んだ向かい側で型わくの解体作業を開始したが、その後、AとBは別の場所の型わくの組立てを開始したので被災者は一人で解体作業を続けていた。
当日の作業を開始してほぼ2時間を経過した頃、被災者が作業していたところに地山の土砂とともに旧護岸の一部であるコンクリートの塊が落下してきてその下敷きとなった。
崩壊した法面の地山は、深さが約3.4m、勾配は63.4度で掘削する計画であったが、実際には79度の勾配で掘削されており、地質は上部からアスファルト、礫まじりの土、岩盤などとなっていた。
なお、法面の勾配の変更に伴って生ずるおそれのある土砂等の崩壊の防止措置については、被災者の所属する会社は親会社の仕事であると考え、一方、親会社は工期的な面や地山底部が岩盤のため矢板等が打ち難いといった理由で行っていなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 地山の崩壊防止措置を行っていなかったこと
型わくの解体作業を行っていた背後の地山の法面は、深さが約3.4m、勾配が最終的には79度であり、また、礫まじりの土などで崩壊しやすい状況であったにもかかわらず、土止め支保工を設けるなどの崩壊防止措置を講じていなかった。
2 地山の点検とコンクリートの塊等を除去していなかったこと
作業開始前に、地山の浮石、亀裂などの有無及び状態の変化、埋設物等の有無及び状態等の調査、点検をしておらず、また、落下のおそれのあるコンクリートの塊などがあることが明らかであったにもかかわらず、あらかじめ取り除かなかった。
なお、作業を開始する前に、これらの措置をどの事業者が行うかについて明らかにすべきであったが、発注者をはじめ、特定元方事業者及び関係請負人のいずれにおいても指示、協議していなかった。
3 作業計画が作成されていなかったこと
型枠の組み立て・解体の作業について、担当業者、時期、方法等についての作業計画が明確に定められていなかった。
なお、特定元方事業者及び関係請負人が参加する協議組織も設置されていなかった。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 地山の状況等を調査し作業計画を作成すること
地山の掘削の作業等を行うに当たっては、あらかじめ地質、地層の状態、埋設物等の有無及び状態等を調査し、その結果に基づく作業計画を作成する。(安衛則第355~357条)
その際、特定元方事業者は、関係請負人が行う仕事の分担、範囲、安全対策の実施等を明確に定め、指示する。
なお、工事の途中において契約内容に変更が生じた場合には、変更の理由、内容、変更に伴う安全対策の実施者及び経費負担等について明確にする。
2 崩壊防止措置等を確実に実施すること
地山の下方で型わくの組立て又は解体等の作業を行う場合には、地山の地質等に応じて安全な勾配とする、落下のおそれのあるコンクリートの塊等を取り除くとともに、土止め支保工を設けること等により地山の崩壊又は土石の落下等による危険を取り除く。(安衛則第361条)
3 作業主任者を選任し、その指揮で作業を行うこと
掘削面の高さが2m以上の地山の掘削の作業の場合には、地山の掘削作業主任者を選任し、その指揮の下で作業を行わせる。(安衛則第359、360条)
4 安全衛生協議会を設置すること
特定元方事業者は、すべての関係請負人が参加する協議組織を設置のうえ会議を定期的に開催して、特定元方事業者と関係請負人との間及び関係請負人相互間における連絡及び調整等を行う。また、特定元方事業者は、随時に作業場所を巡視する。(安衛法第30条)
【業種】
港湾海岸工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
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河川法面の工事中、ドラグ・ショベルの作動範囲にいた作業者がバケットに激突される
2022/11/18
【労災概要】
この災害は、農業水利整備工事において、河川の法面にコンクリートブロック(以下「ブロック」という。)を設置する作業中に、旋回したドラグ・ショベル(以下「重機」という。)のバケットが作業者の頭部に激突し、死亡したものである。
工事は、河川法面を護岸するもので、護岸の内容は、延長15m強、法長3.6m、勾配63度である。
災害発生当日の作業は、重機を使用してブロックの設置及びすき間への砂利・土砂の充填を行うものである。重機はブロックの設置を行う法面上方の平地に設置され、Aが当該重機の運転をし、被災者Bは、重機で投入した砂利・土砂を充填する作業に従事していた。災害は、上記作業においてAが、右旋回させるつもりのドラグ・ショベルを左旋回してしまったため、ブロック設置場所にいた被災者Bにバケットが激突したものである。
Aは、車両系建設機械の技能講習を修了し、長年の運転経験がある。また、Bは一般的な入場者教育は受けていたが、重機の作業範囲内からの退避等については明確な指示を受けていなかった。なお、Bは保護帽を着用していた。重機は、特定自主検査を実施していた。当該作業についての作業手順は作成されていなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 重機が作動しているときに、被災者が重機に接触するおそれのある範囲にいたこと。
重機災害は、作業者が重機の作業範囲内において、わずかに退避し、重機と共同作業を行うような状況で多く発生している。また、作業者、運転者、監督者が危険に慣れきっているような場面も多く見かけられる。
2 重機の運転者が、重機に接触するおそれのある範囲に被災者が立ち入っているにもかかわらず重機を運転したこと。
3 重機の作動範囲内への立入り禁止及び重機の作動範囲に立入っているときの運転停止についての指示がなされていなかったこと。
4 運転者が重機の旋回の方向を誤ったこと。
5 重機への接触防止等のための誘導者を配置していなかったこと。
6 作業標準が作成されておらず、また、安全衛生教育が行われていなかったこと。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 重機に接触するおそれのある範囲から作業者を確実に退避させるとともに、重機の運転者に対し、重機の作動範囲内から作業者が退避していない場合には、退避を指示させるか、重機の運転を停止するよう徹底すること。
2 重機運転時の作業について、立入り禁止措置、作業者の退避場所、退避確認等を定めた作業手順を定め、作業者及び運転者に対し安全衛生教育をおこなうこと。
3 作業の巡視を行い、重機の作動範囲からの退避状況等を確認し、作業手順に基づいた作業を確保すること。
4 作業内容を検討し、重機の運転者の死角となる範囲での作業が行われる場合等には、誘導者を配置して運転者を誘導すること。
5 重機の運転者に運転教育を実施すること。特に機体の旋回についてはうっかりして逆方向に操作してしまうことがあるので、十分に注意して運転することを徹底すること。
【業種】
その他の土木工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
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