建設業の労災事例

汚水タンクの内部の清掃・点検のために残水を処理する作業中に窒息死

   

【発生状況】

この災害は、発電所の汚水タンク内部の清掃・点検のために残水を処理する作業中に発生したものである。
災害発生当日の午後、タンク内の酸素および硫化水素濃度の測定を行い、酸素濃度が21%、硫化水素が検出されないことを確認し、タンク内の点検および清掃の作業を始めた。
先ず、タンク内の残水の排出を行い、次いで、底部に残った汚水を除去するために汚水吸収タオルを投入した。この汚水吸収タオルを回収するため、下請作業員が順次縄ばしごによりタンク内に入り、吊り降ろされたバケツに汚水吸収タオルを回収する作業を行ったが、3人目に入った作業員Gが3回ほど作業を繰り返した後、タンク底部で作業中に足元がふらつき体調が悪そうだったので、この様子をタンクの外で見ていた下請けの職長は作業員Gを引き上げることにした。
そこで、元請の現場責任者と作業員Hが汚水タンク内に入り、作業員Gの身体にロープを巻き付けて現場責任者と作業員Hが作業員Gを肩に乗せ、押し上げながら縄ばしごを登っていたところ、作業員Hが縄ばしご上1mのところからタンクの底へ墜落した。作業員Gを引き上げた後、現場責任者がタンク内に入り、タンク底部に仰向けに倒れている作業員Hの様子を見たところ、半眼で意識を失っており、直ちに病院へ収容したが、窒息による死亡と診断された。

【原因】

この災害は、発電所の汚水タンク内部の清掃・点検のために残水を処理する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。

1 死亡は窒息によるものと判定されたが、その原因は次のように推定されること。

(1) 救出作業のとき、防じんマスクのずれなどにより鼻、口が塞がれて窒息状態を引き起こしたこと。

(2) 墜落して後頭部を打撲し無意識になったとき、舌の落ち込み等により気道閉塞を起したこと。

(3) パニック状態により心肺機能が低下したこと。

2 縄ばしごを使用しての救助作業を行ったため、救出者を抱きかかえながらの不自然な作業姿勢を強いられることとなり、着用していたマスクのずれまたは墜落するなどの間接的要因を引き起こしたこと。

3 タンク内での異常時における救出作業についてのマニュアル類が具体的に定められていなかったため、2次災害を防止する手段を検討することなく救出作業が行われたこと。

4 安全衛生管理に関する機能が十分に機能していなかったため、現場での作業がそれぞれの監督者の判断に委ねられて行われており、作業の安全衛生に関する事前の検討が不十分であったこと。

【対策】

この災害は、発電所の汚水タンク内部の清掃・点検のために残水を処理する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 タンク内での作業を行う必要性を少なくするための設備的な改善を検討すること。

2 タンク内への昇降設備は、鋼製の固定できるものとすること。また、ライフラインを設けるなど昇降中の墜落防止対策を講じること。

3 タンク内での作業行うときは、監視人を配置し、異常を早期に把握するために必要な措置を講ずること。

4 救助作業について、空気呼吸器等、はしご、繊維ロープなど備え付ける必要のある用具・器具類、救助方法などについてマニュアル化すること。

5 現場監督者には、作業方法の決定、作業員の指揮、酸素などの濃度測定、用具・器具または設備の点検、保護具の使用状況の監視、異常時の適切な措置を確実に行わせること。

6 教育・訓練の実施

(1) 防じんマスクのフィットネステストなど使用する保護具の着用時における留意事項などについて実技を取り入れて教育を実施すること。

(2) 異常事態が発生した場合を想定した避難および救助に関する実地訓練を定期的に実施すること。

【業種】

機械器具設置工事

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100736より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 - 札幌の建設業

猛暑の炎天下の作業場所で足場解体部材搬出等作業中、熱中症によって死亡

   

【発生状況】

この災害は、炎天下での屋外作業のために発生した熱中症によるものである。

災害発生当日、被災者Aは、午前9時頃から12時頃まで所属する会社の炎天下の資材置場において、足場の部材等の整理整頓を行い、休憩室で1時間昼休みした。

午後からは、別の場所にある新築工事現場にトラックで移動し、同僚作業者B、Cおよび被災者Aの3名で、午後2時半頃から足場の解体作業および解体した足場資材をトラックに積み込む搬出作業を行なった。

現場は、当日は朝から暑く、最高気温が37.4度に達する猛暑であった。このときの被災者Aの服装は、ポロシャツ、ジーパンを着用し、薄手の作業用ベストをつけていた。また、被災者Aが作業していた作業場所は、屋根等の直射日光を遮る設備はなかった。

30分ほど作業したとき、同僚Bは、被災者Aが非常に気分が悪そうに見えたので、1時間程度日陰の場所で休ませた。

午後4時頃から被災者Aは、作業を再開したが、足元がふらついて災害をおこす危険があったので、元請X社の現場責任者が作業を停止させ、日陰の場所で再び休ませた。5時頃から被災者は、吐き気を催し、症状がひどくなったので、救急車で入院させ、診断の結果、熱中症であると診断され、その後多臓器不全のため死亡した。

【原因】

その災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 災害発生当日の最高気温が摂氏37.4度(16時01分計測)という暑い日に屋根のない炎天下で資材置場での足場の部材等の整理整頓、トラックへの足場解体部材の積み込み作業等を行わせていたこと。

2 大量の発汗による塩分の喪失に対して、これを補給しなかったため、熱痙攣がおこり、被災者の体温調節や循環機能に障害が生じたこと。

3 現場の安全管理担当者が塩分および水分を補給ができるよう準備をするなどの夏期の熱中症状対策を怠ったこと。

4 被災者に吐き気等の異常が見られたとき熱中症であることが、本人および関係者に認識されておらず、単なる体調不良と見なしていて、緊急入院等の早期の救急措置が遅れたこと。

5 現場の安全担当者は、作業開始前の作業打ち合わせ、KY活動、注意事項の伝達を行なっておらず、被災者への健康状態、作業服装にも注意が払われていなかったこと。

6 現場の安全管理者に熱中症に対する認識が低かったこと。

【対策】

同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。

1 日中の気温上昇が予測される時は、直射日光を遮り、風通しのよい休憩所を確保すること。

2 気温の上昇が著しい場合には休憩時間の間隔を十分にとり、休ませること。

3 炎天下での作業はできるだけ長時間の作業を避け、また風通しのよい服装をさせること。

4 休憩場所には水分、塩分補給のためにスポーツドリンク、身体を適度に冷やすことのできる氷水、顔や体の汗を流す水洗場備え付けること。

5 統括安全衛生責任者は、高温となることが予測される日は、あらかじめ関係請負人との連絡網を通じて、工事関係者に周知させ、事前に熱中症の予防指示し、措置を講ずること。

6 労働者が熱中症の症状を呈したときは、軽症のときは下記の手当てを行わせ、症状が回復しないときは重症と見なし、直ちに病院に搬送し、診察、治療を受けさせること。

(1) 涼しいところで安静に寝かせる。

(2) 水やスポーツドリンクなどを取らせる。

(3) 裸体に近い状態にし、冷風を当てる等により体温の低下を図る。

 

【業種】

その他の建築工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100740より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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