建設業の労災事例

化学プラントの配管をガス溶断中、配管内のトルエンに引火し火傷

   

【労災概要】

この災害は、既設の化学プラントを解体する工事において、プラントの配管をガス溶断する作業中に発生したものでる。

災害発生当日、Y社の化学プラントの解体工事を請け負ったZ社の作業者A~Cの3人は、朝から高所作業車およびローリングタワーを使用してプラントの配管をガス溶断で解体する作業を行っていた。

午前11時頃、AとBは高所作業車の上に、Cはローリングタワーの上に、それぞれ上ってトルエンが貯蔵されていたタンクにつながっている2本の配管をガス溶断により切断し始めたところ、突然「ドーン」という音とともに、配管の下部にあるピットから炎が立ち上り、上方で作業を行っていた3人は火傷を負った。

この工事を開始する前には、高圧水による配管等の洗浄を行っていたものの、配管内のトルエンの残留を測定により確認してはいなかった。また、工事に先立ち配管の端部に閉止板を設置する等の措置を講じていなかったため、配管内に残留していたトルエンの蒸気がピット内に流れ出て滞留し、これにガス溶断の火花が落下して着火したものである。

Z社では、引火性が高いトルエンが残留しているおそれがある配管を安全にガス溶断するための作業方法の検討を事前に行っておらず、作業者に対する安全衛生教育も実施していなかった。

また、Y社は解体工事の発注に際し、Z社にタンクに貯蔵していたトルエンの危険性・有害性等の情報を提供していなかった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 配管内にトルエンが残留していたこと

解体工事の前に高圧水により配管やタンクの洗浄を行ってはいたが、十分ではなかったため、残留していたトルエンの蒸気がピット内に流れ出て、これに落下したガス溶断の火花が着火した。

また、Z社では、洗浄した後に、トルエンの残留を測定によって確認すること、配管の端部に閉止板を設置することなどの措置を講じていなかった。

2 化学プラントの解体工事の注文者のY社がタンクに貯蔵していたトルエンの危険性・有害性等の情報を請負人のZ社に提供していなかったこと

3 安全な作業方法の検討や作業者に対する安全衛生教育を行っていなかったこと

危険物であるトルエンが残留しているおそれのある配管などをガス溶断するにあたって安全な作業方法の検討や作業者に対する安全衛生教育を実施していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業開始前に残留物の確認を行うこと  トルエン等の危険物が残留しているおそれのある配管をガス溶断する場合には、あらかじめ高圧水などにより内部を十分洗浄するとともに、測定を行って残留物がないことを確認するとともに、配管の端部に閉止板を設置する。

2 化学プラントの解体等の作業の注文者は、当該設備の中の化学物質の危険性・有害性や取扱上の注意事項等の情報を請負人に提供すること

3 安全な作業方法を検討し、作業者に安全衛生教育を実施すること

危険な設備の解体作業については、事前に想定される危険有害性の検討を行って安全な作業方法を決定し、作業者に対し安全衛生教育を行うことが必要である。

【業種】

機会器具設置工事業

【被害者数】

休業者:2人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 - 函館の建設業, 旭川の建設業, 札幌の建設業 , , , , , , , , , , ,

ダムの取水ゲートの点検中、ダイバーが溺死

   

【労災概要】

この災害は、ダム内に堆積した土砂等の浚渫工事で、開かなくなった取水ゲートをダイバーが潜水して点検しているときに発生したものである。

災害発生当日は、浚渫工事の準備として、取水ゲートを開放し、ダム内の水を放出する作業が予定されていた。朝、現場に集合した3次下請のZ社の作業者A、Bの2人は、前日までに元請から指示されたとおり、取水ゲートを徐々に開放したが、15cm程開放したところでそれ以上ゲートが開かなくなったので、ゲートをいったん閉めて、Aがフーカー式潜水器を着用して潜水したところ、ゲートの周りにゴミが詰まっていた。Aは潜水しながらゴミを取り除き、午前中の作業を終えた。午後になり、ゲートを開放しダム内の水を放出する作業を再開したが、今度はゲートが30cm程開放したところでそれ以上開かなくなった。

そこで、Aがゲートの状況を点検するためゲートを開放したままで潜水し、点検していたところ、地上でAへの送気とゲートの開閉操作をしていたBと水中のAとの連絡が取れなくなった。このときAへの送気量も減ったことから、Bは元請の担当者に連絡したが、その後、駆けつけた別のダイバーが、ゲート付近でマスクが外れ溺死しているAを発見した。

Aは単独で潜水していたため、Aが溺死した状況は不明であるが、Aの潜水服にゲートと擦れた跡があったことから、Aが点検作業中にゲートに詰まっていた木の枝等のゴミがゲートから外れ、急に水が流れ出したため、Aは、水流にのみ込まれてゲートに激突し、その際、マスクが外れるとともに水流で脱出できなくなったものと推測された。Aは、安全に潜降・浮上するためのさがり綱を使用していなかった。

なお、当日、当該現場で作業していたのはZ社のA、Bの2人のみであって、元請等からの現場責任者は、不在であった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 取水ゲートを半開きのままで潜水したこと

ゲートが一部開いた状態で潜水したため、ゲート付近に堆積していた土砂等の一部がゲートから流れ出して急に水の流れが生じ、この流れにのみ込まれたAがコンクリート製のゲートに激突し脱出できなくなった。

2 安全に昇降するためのさがり綱を使用していなかったこと

さがり綱を使用していなかったため、水流に巻き込まれ、マスクが外れる等の異常が発生した際に浮上することができなかった。

3 単独で潜水作業を行ったこと

Aは単独で潜水作業を行っていたため、作業中に異常があっても、即座にAを救出することができなかった。

4 作業および作業者に対する管理が十分に行われていなかったこと

当該作業は、3次下請の作業者2人のみで行われ、現場には元請等の現場責任者が不在で、当該作業に対する安全な作業方法等についての指示、指導が実施されていなかった。

【対策】

同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 取水ゲートを開放した状態で潜水作業をしないこと

取水ゲートを一部でも開放した状態では、激しい水流が生じるため、潜水作業をしないようにする。やむを得ず取水ゲートを開放して潜水作業をしなければならない場合には、潜水作業者の体をベルトで固定する等、水流にのみ込まれないような措置を講じる必要がある。

2 潜水作業者にさがり綱を使用させること

潜水作業では、安全に潜降・浮上するためのさがり綱を現場に用意するとともに、潜水作業者にさがり綱を使用させる必要がある。

3 潜水作業では補助ダイバーを配置しておくこと

潜水作業では潜水中の作業者に異常事態が発生した場合に、すぐに対応できるように、補助ダイバーを配置するようにする。

4 作業および作業者に対する管理を徹底すること

工事の実施に当たっては、元請等の現場責任者を中心に、作業の内容および作業方法等について十分な打合せを行うとともに、現場責任者は現場に常駐し、工事を作業者まかせにしないようにする。

【業種】

その他の土木工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 - 函館の建設業, 旭川の建設業, 札幌の建設業 , , , , , , , , , , , , ,