建設業の労災事例

水力発電所の取水口の自動除じん機の保守作業中、はさまれて死亡

   

【労災概要】

この災害は、水力発電所の取水口に設置された自動除じん機のチェーンに付着した古い潤滑油(グリス)を除去する作業を行っているときに発生したものである。

この自動除じん機は、電動機を駆動源として、機械の下方と上方との間を回転するチェーンに金属製のバケットを取り付けた装置で、下方の軸部分を水面下に没し、バケットが取水口に設けられたスクリーンに沿って上昇することで、浮遊するゴミや枯れ葉を連続的にすくい取るものである。

災害発生当日、水力発電所の作業者A~Cの3人は、自動除じん機の保守作業を行っていた。この保守作業は、まず、自動除じん機の始動点検を行った後、チェーンに付着している古い潤滑油を除去し、その後、新しい潤滑油を塗布するという手順であった。

古い潤滑油の除去は、自動除じん機を運転しながら、作業者が動いているチェーンにステンレス製のヘラを押し当てて付着している潤滑油をそぎ取る方法で行われた。Aが自動除じん機の操作をし、Bは除じん機の内側で、Cは除じん機の外側で、それぞれチェーンにヘラを押し当ててチェーンに付着した潤滑油を除去していたところ、除じん機の内側にいたBが上方のチェーン駆動軸と上昇してきたバケットとの間にはさまれた。すぐにAがチェーンを逆転してBを救出し、病院に搬送したが死亡した。

この作業では、除じん機の内側にいる作業者は、バケットが上昇して接近するたびに、身をかがめてバケットをやり過ごすことになっていたが、Bはバケットが接近してくることに気づくのが遅れてはさまれたものである。

発電所では、毎月1回、保守作業として自動除じん機のチェーンに潤滑油を塗布し直す作業を行っていたが、安全な作業方法を定めた作業手順書を作成していなかった。また、作業者に安全衛生教育を実施していなかった。

【原因】

この災害の原因として次のようなことが考えられる。

1 自動除じん機を動かしながら、はさまれる危険がある箇所に立ち入って作業者に保守作業を行わせていたこと

自動除じん機の保守として、チェーンの潤滑油を除去し、塗布する作業があったが、機械を停止せず、また、作業者がはさまれる危険がある箇所に立ち入って作業を行わせた。このため、作業者は、上昇してくるバケットとチェーンの駆動軸にはさまれないようにするため、バケットが接近するたびに身をかがめてバケットをやり過ごすという危険な作業を行っていた。

2 作業者が自動除じん機のはさまれ危険箇所に立ち入ったときに、自動除じん機が停止する構造となっていなかったこと

3 自動除じん機の保守作業に係る作業手順書の作成や作業者への安全衛生教育を実施していなかったこと

この発電所では、自動除じん機の保守作業について、安全な作業方法を定めた作業手順書を作成していなかった。また、作業者に安全衛生教育を実施していなかった。

【対策】

同種災害の防止のために次のような方策が考えられる。

1 自動除じん機の危険な箇所に立ち入り、機械を動かしながら行う作業をなくすこと

自動除じん機の保守作業について、作業者が自動除じん機の危険な箇所に立ち入らずに行うことができる作業方法または自動除じん機を停止して行うことができる方法を検討し、採用する。

また、自動除じん機を停止して保守作業を行う場合には、操作盤の電源を切って施錠するとともに、「保守作業中 動かすな」等の表示を行い、他の作業者が誤って起動することがないように措置することも重要である。

このような作業方法が困難なため、止むを得ず、作業者が自動除じん機の内側に立ち入り、機械を動かしながら保守作業を行わなければならない場合は、作業者がはさまれる危険が生じないよう、次のような措置を講じる。

[1] バケットが駆動軸に接近したことを検知して機械の運転が一旦停止する運転モードを設ける。この場合、このモードでは機械は低速で動作するようにし、機械の再起動は、作業者がいったん、危険箇所から立ち退かないと行えないようにする。

[2] 危険を感じた作業者が機械を停止することができるように作業箇所に非常停止スイッチを設置する。

2 作業手順書を作成し、作業者に安全衛生教育を実施すること

自動除じん機の保守作業を安全に行うことができる方法を検討して作業手順書を作成し、これを基に作業者に安全衛生教育を実施する。

【業種】

機械器具設置工業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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鋼材切断ラインのピット内で搬送用台車とピット枠との間にはさまれ死亡

      2023/01/17

【労災概要】

この災害は、製鉄所の鋼材切断ライン下部に設けられた端材回収用台車が走行するピット内において、電気配線の交換敷設状況を確認するためにピット内に立ち入った作業者が、走行してきた台車とピットの枠にはさまれたものである。

この鋼材切断ラインは、鋼材が3組のレール上を移動し、トーチで所定の長さに切断するもので、その際に切り落とされた端材はライン下部(地下)に設けられたピット内を往復する台車で回収される。1組のレール上には台車が3両(自重:1両約3t)あり、それぞれがエンドレス状の1本のワイヤーに繋がれ、このワイヤーを電動機で巻き取ることでピット内を往復走行する。台車の軌道は平坦な直線である。

災害発生当日、製鉄所から電気配線の交換敷設工事を請け負ったZ社では、職長Aおよび作業者B~Dの4人で作業を開始した。工事終了後、Aは、B~Dの3人に作業現場周辺の後片づけを指示するとともに、A自身はピット内に敷設し直した電気配線が台車の走行の障害とならないか確認するためピット内に立ち入った。B~DはAがピット内に立ち入っていることを知らず、工事のため所定の待機位置から移動していた台車を所定の位置に戻してもらうよう製鉄所の設備保全担当者Eに連絡して台車の走行操作をしたところ、直後に悲鳴が聞こえ、走行してきた台車とピットの枠との間にAがはさまれていた。Aは病院に搬送されたが、既に死亡していた。

Aが立ち入ったピットの幅は、底部が90cm、上部が120cmで、台車の幅は下部が85cm、上部が100cmであった。通常ピット内を作業者が通行することはなく、保全等のためにピット内に下りる階段が付設されていたが、階段の下り口には開閉式の柵等は設けられていなかった。なお、本設備には、台車の起動前にそれを周辺作業者に伝える警告灯や警報装置は設置されていなかった。

【原因】

この災害の原因として次のようなことが考えられる。

1 ピット内に下りる階段の下り口に開閉式の柵等が設けられていなかったこと

ピット内は台車との隙間がほとんどなく、台車が走行中に作業者がピット内に立ち入るとはさまれる危険があるにもかかわらず、ピット内に下りる階段の下り口に開閉式の柵等、作業者の立ち入りを防止する設備がなかった。

2 台車の起動を周辺作業者に知らせる警告灯や警報装置が設置されていなかったこと

3 ピット内に立ち入ることを他の作業者に連絡していなかったこと

Aはピット内に立ち入ることを他の作業者に連絡せず、かつ、台車の操作盤にも表示していなかった。

【対策】

同種災害の防止のために次のような方策が考えられる。

1 作業者がピット内に立ち入ることを防止するための開閉式の柵等を設置すること

作業者がはさまれる危険があるピット内への立ち入りを防止するため、ピット内に下りる階段の下り口に開閉式の柵等のガードを設置する。さらに、このガードは、開放すると台車の運転を停止し、起動阻止が実行されるインターロックを構成するものとする。

2 台車の起動を周辺作業者に知らせる警告灯やサイレン等の警報装置を設置すること

台車の起動を知らせる警報は、台車の発進に気づいたピット内の作業者が退避できる十分な時間的余裕をもって発せられる必要がある。

3 ピット内に立ち入る場合には、台車の運転操作者に連絡すること

保全作業等でピット内に立ち入る必要があるときは、台車の運転操作者にその旨、連絡するとともに、周辺の作業者にも連絡する。また、「ピット内立入り中」の表示を台車の操作盤とピット内に下りる階段の下り口に表示することも重要である。

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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