空港のボーディングブリッジの点検中に墜落し死亡
【発生状況】
この災害は、空港のボーディングブリッジの定期点検中に発生したものである。
当該空港の各スポットに設置されている全てのボーディングブリッジ(旅客搭乗橋)は、3か月ごとに定期点検されていて、その作業は深夜に行われていた。
当日午後8時30分に、被災者ら作業者4名は、空港から点検作業を受託した会社に集合し、作業責任者から当日の作業内容についての指示が次のようになされた。
(1) 国際線のメンテナンス作業を開始する。
(2) 被災者と同僚1名が電線ケーブルの修正作業を行う。
(3) 他の会社の2名はブリッジのトンネル部分とヘッドカーテンのグリスアップを行う。
この後、会社から現場となる空港に移動し午後10時過ぎに到着した。
空港へ到着後、メンテナンスの対象となるスポットのボーディングブリッジを見ながら再度当日の作業内容と保護具の着用確認を行って作業に着手し、0時までそれぞれの作業を遂行した。
翌日となる0時から1時まで休憩をとった。その後、被災者はボーディングブリッジ先端のブリッジヘッドと呼んでいる部分にあるローラーカーテンのカーテン巻取り軸ベアリングへグリスアップ(給脂)する作業の準備に取りかかった。
1時40分頃、被災者はグリスアップ作業の準備を行っていた。同僚は後ろ向きになる形でボーディングブリッジの走行タイヤブレーキの点検作業を行っていた。突然背後で「ドサッ」という音がしたので振り返ってみると、被災者がボーディングブリッジの右側に寄せてある移動式足場の昇降部のたもとに倒れていた。
その後、被災者は、救急車で病院に移送され入院していたが、翌日に容態が悪化して意識不明となり、2週間後に死亡した。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 足場の最上段から墜落したこと
目撃者がいないため被災者の直前の作業の内容は不明であるが、
(1) 被災者が病院で「足場から降りようとして振り向いたときにバランスを崩して墜落した」と話していた。
(2) ローラーカーテンのカーテン巻き取り軸を囲う扉が開放され、そこに移動式足場が横づけされていた。
(3) 3か月点検の項目にはカーテン巻き取り軸のバネの損傷具合を目視する項目があった。
これらの状況から判断すると、まず被災者は移動式足場の最上段に上ってカーテン巻き取り軸を囲う扉を開けて中の状態を目視点検した。この後、足場の下に降りようとしたときに、足場最上段(2.2mの高さ)の手すりの無い部分から墜落したものと推定される。
なお、移動式足場は、航空会社所有のもので昇降路の両側および最上段の両側には、高さが90cm(中さん付き)の手すりが取り付けられていたが、最上段の1方向には手すりが設けられていなかった。
2 作業手順の打ち合わせが不十分であったこと
作業開始前に、その日の作業内容の打ち合わせを行っていたが、作業に使用する機器材およびその安全性、安全帯の準備等についての打ち合わせや指示はなかった。
なお、移動用足場は、航空会社の所有で本来航空機の点検に使用されているものであったが、以前よりボーディングブリッジのメンテナンスを行うときには借用していた。
3 指揮命令系統が不明確であったこと
このメンテナンス作業は、当日の作業責任者の会社が請け負い、被災者の会社および他の2社が下請けとして入っている形であった。当日も2社から社長がきて作業を行うなど作業指揮命令系統等についても明確でないまま作業が継続されていた。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業用足場の安全を確保すること
高所で作業を行う場合には、墜落・転落を防止するための安全な足場(作業床)を確保することが必要である。移動式足場等を使用する場合には昇降時および最上段での作業時に転落等のおそれがないように手すり等を完備したものを使用する。(安衛則第518~521条)
なお、移動式足場等は、使用する会社がその作業に専用のものとして製作したものが望ましい。やむを得ず他の所有者のものを借用する場合には、転落等を防止するための手すり措置等が完備していることを確認し、不適切なものは使用しない。
2 安全衛生教育を実施すること
高所で作業を行う者に対しては、安全足場の確保、やむをえない場合の安全帯・保護帽など保護具の使用、移動式足場の安全措置等について繰り返して安全衛生教育を実施する。
また、作業の責任者は、これらについて作業開始前に明確に指示するとともに、その履行状況を確認する。
3 作業計画と指揮命令系統を明確にすること
安全な作業を遂行するためには、安全な作業計画、作業方法・手順を明確に指示するとともに、作業および安全衛生についての指揮命令系統を明確にしておく必要がある。
そのためには、作業者の安全衛生を確保する義務は直接の事業者にあるのか、あるいは請負契約をした事業者にあるのか等を明確にし、その責任者が安全衛生を確保するための各種の措置を確実に履行する。
【業種】
電気通信工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100928より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
古紙再生プラントの新設工事で水路にマンホールの取付中サイロに転落し、死亡
【発生状況】
この災害は、古紙再生プラントの新設工事において発生したものである。
この古紙再生プラントは、環境団体が新聞紙等の古紙からパルプを再生するために設置するものであった。工事全体は躯体工事、製缶工事、電気工事、その他の設備工事に分かれていた。被災者の所属する会社はこのうち製缶工事を担当し、沈殿槽、水路、スクリュープレス・廃プラスチック選別機の製作と設置作業を請け負った。
当日、被災者は、同僚と二人で午前8時頃、現場に到着し、お互いの作業内容を確認したのち作業に着手した。
午前中は、二人で水路(ステンレス製で断面が300cm×126cmの箱型)のマンホール設置箇所にガス溶断機で丸く穴を開け、そこにマンホールの台座を設置して外周をアーク溶接により仮付けする作業を行った。
午後は、分かれて作業を行い、被災者は、アーク溶接によりマンホールの本溶接を担当し、同僚は前日に仮付けした水路のドレン管の本溶接を行った。午後3時から30分ほど二人で休憩し、また作業を続けた。
午後5時頃、同僚は、自分の作業が終了したので、現場から引き上げようとして被災者の作業箇所に行ったが見当たらなかった。
そこで、水路の別の箇所に設置されていたマンホールから水路の中に入って被災者を探した。水路につながっているサイロ(ステンレス製の直径350cm、高さ770cmの円筒形)の方に行ったところ、サイロ下に白い影が見えた。サイロの点検用マンホールを開けて見たところ、被災者がサイロ内に倒れていたので、この工事の元請の作業員らとサイロ内に入り、被災者を救出して人工呼吸等を施したが意識は回復せず、死亡した。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 作業に関係のない場所に立ち入り、転落したこと
以前、被災者はサイロ関係の作業を行った経験があったので、サイロの構造に興味を抱き、サイロの方に水路内を移動していて、サイロに転落した。
なお、被災者が溶接作業を行っていた箇所は、マンホール用の穴が開けられていたので200lx程度の明るさがあった。しかし水路とサイロとの接続箇所では0~1lx程度で周辺がほとんど見えない状態であった。
2 作業計画が明確に定められていなかったこと
被災者の所属する会社は、受注した水路等をこの現場とは離れている工場で製作し、それを現地で組み立てるため作業員を工場から派遣した。全体の工期等については会社として承知はしていたものの、毎日の作業計画、手順等については作業員に任せ切りであった。
3 元請の統括管理が十分でなかったこと
この工事現場では、躯体工事を請け負った建設会社が特定元方事業者になっていたが、工期も当初の予定を過ぎて手直し工事や追加の工事を残すのみとなっていた。したがって、朝にミーティングを行ってはいたものの、被災者の作業について特段の指示も行っていなかった。
なお、被災者と同僚は、当日の朝のミーティングには参加していなかった。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画を定め作業管理を行うこと
自社で製作した機械設備等を設置する場合、製作の段階から機械設備等に詳しい者を据付現場に派遣することも多い。その場合であっても全体の作業計画と合わせて毎日の作業計画・手順を作成し、また、作業の進行状況を定期あるいは随時に報告させる。
また、現場での作業責任者を指名し、毎日の作業開始前に作業内容、作業手順、作業分担、危害防止に必要な安全帯や保護具の使用等について指示を行わせる。
なお、作業責任者は、定期あるいは随時に各作業者の作業箇所を巡視し、指示事項の履行状況の把握と必要な指示を行う。
2 安全衛生教育を十分に行うこと
同種作業の経験が長い者は、その作業に関する知識・技能は優れているものの、危害防止措置等については慣れで省略してしまうことが少なくない。熟練者に対しても、定期あるいは随時に安全衛生に関する教育訓練を実施する。
また、アーク溶接機を用いて行う溶接、溶断の作業については、特別教育を実施したうえで作業に従事させる。(安衛則第36条第3号)
なお、古紙再生プラント等で改修作業等を行う場合には、酸素欠乏危険あるいは硫化水素による危険を生ずることがあるので、その場合には作業者に特別教育を行うとともに、環境測定の実施等を行う。(安衛則第36条第26号、安衛法第65条・令第21条第9号)
3 元請は統括安全衛生管理を十分に行うこと
特定元方事業者は、輻輳した作業が一段落した工事終盤であっても、下請業者を含めた協議組織の設置と運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視等を確実に適切に実施する。(安衛法第30条)
【業種】
機械器具設置工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100929より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。