建設業の労災事例

測量作業中、後退してきた不整地運搬車にひかれて死亡

   

【労災概要】

この災害は、圃(ほ)場整備工事において、測量作業を行っているときに発生したものである。

災害発生当日、現場には元請及び下請の作業者14名が集まり、午前8時から元請の現場責任者Aから作業内容について口頭で指示があった後、それぞれ担当に分かれ、測量、石拾い、基盤ならし、土砂の移動等の作業を開始した。

作業を開始した直後、Aは測量作業に必要な資材が不足していることに気づき、これを補充するため現場を離れた。そのとき、Aは、作業者Bに土砂の移動作業の準備を行うよう指示した。

Aから指示を受けたBは、当日は雨が降っていたので土砂の運搬はダンプトラックではなく不整地運搬車を使用した方が効率的に行えると考え、前日の作業で使用した不整地運搬車を隣の工区から後退(バック)で運転して現場工区まで進入させた。

このとき、石拾いをしていた作業者Cが大きな声をあげ、B自身も不整地運搬車が何かに乗り上げたように感じたので、不整地運搬車を停止し、状況を確認したところ、作業者Dが倒れ、不整地運搬車にひかれていた。Dは直ちに救出され、病院に搬送されたが、死亡した。

この工事現場では、不整地運搬車を方向転換するスペースがあったにもかかわらず、Bは、方向転換することをめんどうに思い後退で運転した。

また、Bは、不整地運搬車の運転業務の資格を持っておらず、不整地運搬車の鍵は現場事務所の壁にかけられており、誰でも自由に取ることができた。

この現場では、元請及び下請の作業者に対する安全衛生教育が十分には実施されておらず、工事の作業手順や作業方法を盛り込んだ作業計画書の内容は作業者に周知せず工事に着手していた。そのため、作業に必要な指示は、すべてAが現場で口頭で行っていた。

【原因】

この災害の原因として、次のようなことが考えられる。

1 無資格者による不整地運搬車の運転を防止するような管理がされていなかったこと

不整地運搬車の鍵が誰でも自由に取れるようになっており、その管理が適切に行われていなかった。また、関係作業者に不整地運搬車の無資格運転の禁止が徹底されていなかった。

2 不整地運搬車の運転者が、後方確認を十分に行うことなく後退で運転したこと

運転者が、現場の作業者の位置を確認しないまま、方向転換をめんどうに思い後退で現場に侵入した。

3 作業者に対し安全衛生教育を十分行わず、また、作業計画書の内容を作業者に周知しないまま工事に着手したこと

【対策】

同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 使用する不整地運搬車の無資格者による運転を防止するよう管理を徹底すること

無資格者による不整地運搬車の運転を禁止するとともに、不整地運搬車の運転責任者が鍵の管理を行い、無資格者には運転をさせないようにする。

なお、工事現場で使用する他の車両系建設機械についても建設機械ごとの運転責任者を定め、その者以外の者の運転を禁止することも必要である。

2 不整地運搬車の運転操作、作業方法を確認し、運転者に徹底すること

不整地運搬車の移動は、前進を原則とし、止むを得ず後退する場合は必ず後方確認を確実に行わせ、誘導者を配置する等、安全な作業方法を運転者に徹底する。

3 作業者に対し、予め十分な安全衛生教育を実施するとともに、工事の作業手順や作業方法を盛り込んだ作業計画書の内容を周知すること

作業者に対し、十分な安全衛生教育を実施するとともに、作業計画書の内容を周知し、毎日の作業打合せでは、作業計画書に基づいて安全な作業手順により作業を行うよう関係作業者全員に指示する。

【業種】

土地整理土木工事業

【被害者数】

死亡者数:1名

 

出典:厚生労働省ホームページ職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

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工場内廃棄物焼却炉の吹きつけ作業中に薬傷

   

【労災概要】

被災者ら3名の作業者は、化学工場内における廃棄物焼却炉の定期補修工事で、耐火物へ耐火物の硬化時間促進剤である急結剤の吹付け作業を行っていた。その際、ノズルとホースの接続部から飛散した強アルカリの急結剤が作業者3名の皮膚に付着したことにより、3名とも薬傷(化学性皮膚炎)を負った。これによる休業等はなかった。

【原因】

1 作業計画書に安全作業に係る指示・留意事項が記載されていなかったこと。

2 作業者に必要な安全衛生教育が行われていないこと。

3 液体が浸透しない保護具など、適切な保護具を選定していなかったこと。

4 使用する薬剤のSDSが交付等されていなかったこと。

5 災害発生当日に、作業指揮者が出勤出来ず作業体制が変更となったにも関わらず、代替措置や対応策を協議・打合せすることなく作業を実施したこと。

【対策】

1 作業計画書に、安全作業に係る指示・留意事項を記載するとともに、現場の体制における各担当者の役割を明確化すること。

2 作業に応じた適切な保護具を選定し、労働者に着用させること。

3 健康障害を生ずるおそれのある物質を提供する場合には、SDS等を提供先に確実に交付等すること。

4 適切な安全衛生教育を実施すること。

【業種】

その他の建築工事業

【被害者数】

負傷等はあったが、休業はなし

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

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