送電線の接続箱を交換して復旧する作業中に誘導電圧で感電
【発生状況】
この災害は、電力会社の送電電路にある接続箱の交換工事において発生したものである。
工事は、発電所からの架空送電線を地下ケーブルに接続する箇所の接続箱(深さ2m、幅約1.8m、長さ7mのマンホール内にある)で、この接続箱に絶縁油の漏れが発見されたため、解体し新たな接続箱に交換することになった。
作業は、2日前にマンホール内の水抜き作業を行い、前日から接続箱の解体、交換作業が被災者の所属する工事会社の総勢15名で夜を撤して行われた。(うち6名は前日の夕刻に帰宅し、翌朝に徹夜組みと交代)災害発生当日の朝の段階では主な作業は終了していた。
災害発生当日の作業予定は、マンホール内の踏査(マンホール内が前の状態になっているかを目視調査する)と外していた回線の接続で、踏査は電力会社の担当者3名と工事会社の施工責任者が行った。
この踏査が終了し、発電所敷地内にある電力所で154KV送電線の復帰をすることになった。関係者が電力所に移動して、まずABC各相ごとに導体抵抗・絶縁抵抗の測定、静電容量の測定を行った。その結果が良好であったので、鉄塔のところに待機していた被災者らに停電を終了する作業を行うよう指示した。
この作業は、C相から順次接地線の接続、ジャンパー線の取り付け、接地線の取り外しという手順で行うもので、C相とB相は順調に終了した。最後にA相を行うため同僚の一人がはしごを支え、一人は架台上で待機し、被災者が接地線を持ってはしごを上っていたときに断路器の終端部(先端部)に顎が当たり、そのときA相に誘導電圧が生じていたため、被災者は感電死した。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 誘導電圧に対する認識が不十分であったこと
災害が発生した電力所の鉄塔には、2回線の送電線が併設されていて、片側回線を停電しても併設された回線に電流が流れていると誘導電圧が発生するが、その確認が不十分であった。
今回は作業に先立って誘導電圧の測定を行い40Vという値を測定していた。この測定は鉄塔側が接地された状態で測定したため、架空線の誘導電圧の測定にはなっていなかったものと推定され、事故後に接地線を取り外して測定したところ、誘導電圧は1370Vであった。
2 停電等の確認方法が不十分であったこと
電力会社および被災者の会社の作業手順によれば、停電の確認は停電後1度だけ行えばよいことになっており、停電後の各作業ポイントで実施すること、測定の条件等については明確に定められていなかった。
とくに、今回の作業では、絶縁抵抗の測定のため、途中で鉄塔側の接地線を取り外しているのに、それに対応した停電状態の確認を実施していなかった。
3 作業方法が不適切であったこと
被災者が接地線の接続のためはしごを登って行ったときには、軍手をしただけの服装であり、近接した回線を含めて無電圧の状態であると錯覚していたものと推定される。
また、作業全体の指揮系統が必ずしも明確ではなく、接地線の接続作業に活線作業用装置を使用する等の検討も行われていなかった。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 停電等の確認を適切に行うこと
開路した電路が高圧または特別高圧であるものについては、検電器具により停電を確認する。また、誤通電、他の電路からとの混触または他の電路からの誘導による感電危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地されていることを各作業のポイントにおいて確認することが必要である。(安衛則第339条)
また、このことは、作業手順のうえで明確に定めるとともに、作業開始前に関係作業者に周知徹底する。
2 接地線の取り付け作業方法を再検討すること
特別高圧活線近接作業を行う場合には、活線作業用装置を使用させる(安衛則第345条)こと、充電電路の活線作業で感電の危険がある場合には活線作業用器具を使用させるとともに、充電電圧に応じた身体の接近限界距離(電路が電圧154Vの場合は120cm)を保たせる(安衛則第344条)ことを作業者に周知徹底する。
なお、活線作業用装置については、充電電路の電圧に応じた適切なものを準備する(安衛則第348条)とともに、その日の使用開始前にひび、割れ、破れその他の損傷の有無および乾燥状態を点検する。(安衛則第352条)
3 作業間の連絡調整を適切に行うこと
送電線路およびその支持物の点検、修理等を電力会社と関係下請け会社の作業者が共同で作業を行う場合には、あらかじめ関係者で十分に打合せを行うとともに、作業指揮者を定め、当日の作業開始前に作業の方法、手順等を周知させるとともに、作業を直接指揮させる。(安衛則第350条)
【業種】
電気通信工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100819より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
鋼管棚足場の上で作業中、溶接機から流れた電流が保持した部材をとおり作業者が感電
【発生状況】
この災害は、病院の新築工事において、3階の多目的ホールの天井下地材の取り付け作業中、足場上でアーク溶接の電流により感電したものである。
災害発生当日、A・B2名の作業者が鋼管棚足場および棚足場端部のブラケット足場の上で化粧見切り縁を天井下地材への取り付け作業をしていた。その作業の準備として見切り縁寸法を合わせる作業をしていたところ、隣接場所で天井下地の補強材取り付けのため、稼働中の溶接機の溶接棒から天井軽鉄骨部材に流れた電流により、作業者AおよびBの2名が感電してAが死亡したものである。
溶接機は、交流アーク溶接機で高抵抗始動型自動電撃防止装置を内蔵したものであり、溶接機2次側の帰線側ケーブルは2階の鉄骨柱に、溶接棒側は30mのケーブルにより溶接棒ホルダーに接続されていた。
電流は、作業者が使用していた鋼製棚足場の鋼製床から被災者AとBの人体を通じて、保持していた鋼製の見切り縁から帰線側の鉄骨躯体を経由して流れたものである。
鋼製棚足場は、コンクリートスラブ上に設置され溶接機の2次側からは通常では絶縁状態であるが、溶接棒が棚足場の鋼製床材等に接触している状態で、作業者が鉄骨躯体側の部材取り付けなどを行うと、棚足場と鉄骨躯体側との間に約70Vの電位差を生じて、被災者らには2秒間に70mAの電流が流れ、心室細動を発生したものである。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 アーク溶接機の帰線側ケーブルを被溶接材の溶接点の近くに接続せず、鋼製棚足場もアースを設置していなかったこと
溶接作業場所の近くにアースをとらず2階の鉄骨にとったため、絶縁されていた被災者が天井下切材に接触することにより電流が流れた。
2 災害が発生する前の作業中に電動工具の躯体に火花を発したり、電撃を感じた作業者がいたにもかかわらず、原因を確かめず作業を続行したこと
作業場所近傍での電撃の原因がはっきりしないにもかかわらず、作業責任者に報告や事後措置を行わず作業を続行していた。
3 発汗により人体の抵抗値が低下していたと見られること
発汗は人体の抵抗値を低下させて、より体内へ電流が流れやすくなる。
4 溶接機の溶接棒ホルダーに溶接棒を取り付けたまま、作業床に放置しておいたこと
溶接作業を中断するに際して溶接機の電源を開かないまま、溶接棒ホルダーを導電性の高い鋼製の作業床においたため、溶接機2次側回路に電流が流れた。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 電撃や火花が発生するなど漏洩電流や迷走電流のおそれが発見されたときには、その原因を確認して対策を講じること
一般に電撃が感じられたときに、その電流がどこから流れてきたのか原因の特定が困難な場合が多い。この様な場合については、電気担当者や主任技術者に判断を委ね原因 の特定とその除去が完了するまで作業を中止する。
2 溶接機の2次側帰線ケーブルは、被溶接材の溶接点の近くに接続すること
帰線側ケーブルの接続は、溶接作業を行う場所に近接させて行う。アースと溶接位置が離れていると電流が迷走することがある。
3 高抵抗始動型の自動電撃防止装置は、その機能として容易に作動して出力側に不意に高い電圧を2次側に発生することがあるので、低抵抗始動型のものを選択すること
4 鋼製足場の上で溶接作業などが行われる場合には、足場をアースすること
5 鋼製足場の作業床の上に、溶接棒ホルダーを放置しないこと
溶接作業を中断する時には、併せて溶接機の電源を遮断し溶接棒ホルダーから溶接棒をはずしておく。
【業種】
その他の建築工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
不休者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100820より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。