トンネル工事現場において、ダンプトラックが燃える
【発生状況】
この災害は、トンネル工事現場において、坑内に駐車していたダンプトラックから出火、炎上し、避難中の作業者が煙を吸い込んだものである。
災害発生当日、この工事現場では監督者を含め7名の作業者がおり、坑口から約800m奥の切羽部での作業と履工作業、残土処理作業等を行っていた。
作業を始めて3時間後、切羽部での作業とダンプトラックによる掘削残土の抗外への搬出作業が終了した。その日はダンプトラックの使用予定がないので、運転手は坑口から約600m入った坑内に駐車し、キーを抜いて、ダンプトラックを離れた。その30分後、ダンプトラックのエンジンルームから炎と煙が上がっているのを付近にいた作業者が発見した。坑内にいた作業者は、備え付けられていた消火器による初期消火を行ったが、火が消えなかったので、坑外へ避難した。このとき、徒歩で避難中の作業者5人が煙を吸い込み、近くの病院で手当てを受けた。
その後、到着した消防署により消火活動が行われ、鎮火した。なお、煙を吸い込んだ5人以外、人的な被害はなかった。
火が出たダンプトラックは、エンジンルーム内の排気管が外れており、排気ガスの熱でエンジンルーム内にたまっていたすすやほこりが発火したものであった。このダンプトラックは、工事現場内のみを走行し、公道を走行するための車検は受けていなかったが、トラックの所有者は公道を走行する車両と同様の定期検査を半年ごとに行っていた。また、作業開始前の日常点検は毎日行われていたものの、点検項目はブレーキ、前照灯、方向指示器等であり、エンジンルーム内の点検を行われていなかった。
このトンネル工事現場では、坑内に消火器のほか、空気呼吸器が備え付けられていたが、作業者は空気呼吸器の使用方法を知らなかった。また、坑内で火災が発生したことを想定した消火訓練や避難訓練は実施されていなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 ダンプトラックの点検を適切に実施していなかったため、排気管が外れていたこと
ダンプトラックについては、毎朝、作業開始前の日常点検を実施していたが、エンジンルームの中は点検していなかった。そのため、エンジンルーム内で排気管が外れていることに気づかず、たまったすすやほこりが発火し、火災が発生した。
2 長時間使用しないダンプトラックを坑内に駐車したこと
当日中の使用予定がないダンプトラックを坑内に駐車したため、火災発生時に煙が坑内に充満し、作業者5人が被災した。
3 消火訓練や避難訓練を行っていなかったこと
坑内での火災を想定した消火訓練や避難訓練を行っていなかったため、初期消火や避難の際に作業者は備え付けられていた空気呼吸器を使用することができず、被害が拡大した。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 ダンプトラック等について作業開始前等の点検や修理を適切に行うこと
坑内で使用するダンプトラック等、内燃機関を有する機械については、火災の発生が重篤な事態を引き起こすことから、エンジンルーム内も含めて点検を行うようにする。また、走行中に音、振動等の異常を感じた場合には、直ちに坑外に移動し、原因を突き止め、必要な修理を行うことも重要である。
2 坑外の安全な場所にダンプトラック等の駐車場所を設けること
坑内で使用するダンプトラックであっても、坑外に駐車場所を設け、長時間使用しない場合は坑外に停めることが重要である。
3 坑内で発生した火災等を想定した消火訓練や避難訓練を実施すること
坑内で火災等の異常が発生したときの措置をよく検討し、その措置を作業者に周知徹底するため消火訓練や避難訓練を実施する。特に、坑内に備え付けられた消火器や空気呼吸器については、訓練を通じてその使用方法を周知させることが重要である。
【業種】
トンネル建設工事業
【被害者数】
不明
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101097より一部抜粋
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汚水を利用したメタンガス発生装置の試運転中、ライターの火がメタンガスに引火し火傷
【労災発生状況】
この災害は、ビール工場の汚水を利用して、ボイラー用燃料に利用するメタンガスを発生させる装置の試運転中に発生したものである。
このビール工場では、それまで汚水に酸素を送り込む好気処理により汚水処理を行っていたが、メタンガスを発生させて回収するために、酸素を必要としない嫌気処理を行う設備に変更する工事を行い、災害発生当日は、工事業者からビール工場に設備を引渡すための試運転を行っていた。
試運転に立ち会ったのは、汚水処理設備の設計会社(W社)、工事を担当した元請業者(X社)および一次下請業者(Y社)から各1名の担当者、発注者であるビール会社(Z社)の工場担当者6名の計9名で、当日朝からメタンガス発生装置を組み込んだ汚水処理設備の最終点検を実施し、午後4時半から関係者が集合して試運転結果の確認を行った。その結果、付属する脱臭装置について硫化水素濃度が大気への放出箇所で基準値を超えることが報告され、PH調整槽での硫化水素の発生状態を確認することになった。そこでZ社の担当者2名とY社の1名がPH調整槽に向かい、PH調整槽の上に設けられた点検口から硫化水素の濃度を測定したところ300ppmであった。
Z社の担当者2名とY社の1名は、脱臭装置から大気へ放出される硫化水素を減らすためにPH調整槽内をわずかな負圧にすればよいのではないかと考えて、PH調整槽から脱臭装置につながるダクトの空気調整弁を調整した。このとき、PH調整槽が負圧になっていることを確認しようと点検口に手をかざしたが良く分からなかったので、一人がライターを取り出して点火し、これを点検口に近づけたところ、突然、点検口から炎が吹き出し、その場にいた3名が火傷を負った。
試運転を行っていた設備では、メタンガスは主にリアクタータンクで発生させる設計になっていたが、PH調整槽でも硫化水素とともにメタンガスが発生していた。このため、作業者の一人が負圧の確認のために点検口にライターの炎を近づけた際、炎が点検口から槽内に吸い込まれて槽内に充満していたメタンガスと硫化水素に引火したものであった。この汚水処理設備では、硫化水素とメタンガスが同じ箇所で発生することをW社の担当者は知っていたが、Y社およびZ社の担当者は認識していなかった。
汚水処理設備の試運転に当たり、W社とX社が協議し、操作手順や確認項目を盛り込んだ試運転計画書を作成していたが、異常発生時の対応や措置については計画書に盛り込まれていなかった。また、発生するメタンガスや硫化水素の危険有害性、設備の取扱い方法等についてX社は、試運転後の引渡しの際にZ社に通知するつもりであったため、試運転段階では連絡していなかった。
【原因】
この災害の直接の原因は、可燃性ガスの滞留するPH調整槽の点検口にライターの火を近づけたことであるが、このような危険な行為を行うに至った要因としては、次のようなことが考えられる。
1 試運転計画書が不十分であったこと
災害は汚水処理設備の試運転中に発生したが、使用されていた試運転計画書には操作手順や確認項目は盛り込まれていたものの、PH調整槽で発生または滞留する可能性のある可燃性ガスの種類と濃度の測定、PH調整槽での空気の流れの確認方法等、装置の危険性や異常発生時の対応等については計画書に盛り込まれていなかった。そのため、空気の流れを調べようとした一人の作業者がその場の判断でライターを点火し、メタンガスに引火した。
2 安全衛生教育等が不十分であったこと
汚水処理設備の試運転に携わる関係作業者全員に対し、可燃性ガスであるメタンガスや硫化水素の性状とその危険有害性、設備の安全な取扱い方法等について、試運転を始める前に教育していなかった。また、関係作業者に対し、火気厳禁の措置を徹底していなかったため、着火源となるライターが現場に持ち込まれた。
また、PH調整槽での硫化水素濃度測定後、Y社およびZ社の担当者が、W社およびX者の担当者の指示を仰がずに空気量の調整等の作業を行ったことも原因の一つである。
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 設備の危険性を予測し、その危険性への対応方法等を盛り込んだ試運転計画書を作成すること
メタンガス発生装置を組み込んだ汚水処理設備の危険性とその抑制方法、予想される異常とその発生時の措置等の情報は、設備が発注者に引き渡される際に、設備の操作手順とともに提供されるべきものであるが、試運転の段階においても、これらの情報を明らかにした試運転計画書を作成し、これにもとづき試運転を行う必要がある。
2 関係労働者に対し安全衛生教育等を徹底すること
試運転に携わる関係作業者に対し、メタンガスや硫化水素の危険有害性、設備の安全な取扱い方法等について、事前に教育を行うとともに、可燃性ガスが発生する箇所への立ち入りの際は、火気厳禁の措置を徹底する。
また、試運転作業では、作成した計画書どおりでない事態が生じることがあり、そのような場合の指揮者として、設備の構造や危険性に詳しい者をあらかじめ選任しておき、その者に安全衛生面に配慮した指示を行わせることも重要である。
【業種】
機械器具設置工事業
【被害者数】
休業者数:2人
不休者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101099より一部抜粋
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