建設業の労災事例

下水道配管工事において、汚泥流入を防止する止水プラグの取り外し作業中、硫化水素中毒

   

【発生状況】

この災害は、夏季に下水管と枝管の交換、敷設を行う公共工事の後片付け作業中に、下水配管内に仮置されていた止水プラグを取り外す際に発生したものである。

災害発生当日、作業者Aは災害が発生したマンホールの垂直はしごを使ってマンホールの底部まで降り、止水プラグのエアーを徐々に抜くためにノズルのコックを半開放した。このとき被災者は、汚水や汚泥が一気に流れ出さないようにコックの開放度を調整しながら止水プラグを足で押さえていた。2~3分後、被災者Aは垂直はしごを使って現場から脱出を試みたが、はしごに足をかけようとした瞬間、膝を折るように崩れ落ち現場に倒れ込んだ。

作業者Aの倒れ込んだ位置がマンホールの下流方向への排水口付近で排水口を塞いだため、止水プラグ側から流入した汚水や汚泥が倒れている作業者Aの胸元まで達した。これを見た作業者Bは慌ててマンホール下部に降り排水口を確保するとともに、作業者Aの救助を開始したが自分もその後倒れた。その直後、応援に駆けつけた他の業者が近くに準備されていた送風機を用いてマンホール内に送風を開始したところ、Bは自力で起き上がり垂直はしごを途中まで登ったところを引き上げられ救助された。なお、作業者Aはその後駆けつけた消防署のレスキュー隊に引き上げられ病院に搬送された。A、B両者共に医師から硫化水素中毒と診断され、ともに休業期間は15日であった。

なお、災害発生当日、作業開始前にマンホール内の硫化水素および酸素濃度の測定は行われていなかった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 作業中に作業場の酸素濃度・有毒ガスについての測定を行っていなかったこと

災害発生数日前、発注者の検査があった際に作業場の環境測定を行っていたこと、災害発生直前に水糸の撤収作業等が無事に行われたこと等の理由から作業中には環境測定を行わなかった。

2 酸欠の危険がある作業場において換気せず作業を行ったこと

災害発生当日マンホール上部に送風機を設置したが、止水プラグ取り外し作業中に送風機を使用せず作業場所の換気が行われなかった。

3 救助者が空気呼吸器等、適切な保護具を使用せず救助活動を行ったこと

救助者は空気呼吸器等、適切な保護具を着用していなかった。またそれらの準備もされていなかった。

4 第2種酸素欠乏危険作業に係る作業主任者の職務が遂行されていなかったこと

この災害においては関係者のなかに、第2種酸素欠乏危険作業主任者免許を所有していた者はいたが、当日の作業に関しては

(1) 作業開始前に作業の方法を決定し作業を指揮すること

(2) 送風機換気装置等の機能の点検を行うこと

(3) 保護具の使用状況を監視すること

 

等の職務を励行していなかった。

5 連絡体制に不備があったこと

この災害においては事前の安全対策、準備、検討等が不十分であったが、特に関係者の事前の打ち合わせおよびコミュニケーションが不足していた。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 酸素欠乏等危険場所における作業を開始する前には、硫化水素等の有害ガスの発散源となる有害物の存在状況を把握すること。

2 今回のような酸素欠乏危険場所においては、第2種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、作業を開始する直前に作業場所の酸素濃度および硫化水素等を測定すること。また、その結果を基に作業場所の有害ガスの濃度、分布状況等を把握すること。

3 作業を行う場所の空気中の酸素濃度を18%以上に、または硫化水素濃度を10ppm以下に保つように送風機等を使用して換気し、その効果を随時測定によって確認すること。

4 酸素欠乏危険場所および硫化水素ガスが存在しているおそれのある場所における救助活動のときは空気呼吸器等を装着すること。なお、フィルター式の呼吸用保護具は酸素欠乏雰囲気下では使用しないこと。

5 作業者および関係者の酸素欠乏症、硫化水素中毒等に関する知識の不足、硫化水素等の有害性に関する誤認を防ぐため、これらの者に対する酸素欠乏症等防止規則に基づく特別教育を徹底すること。特に酸素欠乏症または硫化水素中毒等の事故に際し救助作業に関する保護具の使用方法、救急蘇生の方法や手順について併せて十分な教育を行うこと。

6 第2種酸素欠乏危険作業主任者は作業に従事する労働者が酸素欠乏の空気および硫化水素を吸入しないように作業の方法を決定し、現場において作業者を直接指揮すること。

【業種】

上下水道工事業

【被害者数】

休業者数:2名

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100821より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

 

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ごみ焼却処理設備の排水ポンプ室内で配管の切断作業中、アセチレン溶断の火炎によりメタンガスが着火して爆発

   

【発生状況】

この災害は、ごみ焼却処理設備の改装工事において、排水ポンプ室内に設置されていたポンプ、配管などの撤去作業中、汚水ピットから流出したメタンガスが、アセチレン溶断の火炎により着火・爆発したものである。

この工事はごみ焼却処理設備の改装のため、各種設備の撤去解体するもので、元請X社と5次にわたる下請事業場によって作業が行われていた。

災害発生当日、朝礼後のミーティングで、4次下請Y社のAと5次下請Z社のBの2人の作業員は汚水ピット(2×4×3m)の上にある排水ポンプ室(2×5×3m)内に設置されている排水ポンプおよび配管の撤去作業を命じられた。A、Bの2人は、アセチレン容器および酸素容器をポンプ室の外に置き、アセチレン吹管をもって、ポンプ室に入り配管の切断を行ったが、配管内部から汚水が流れ出たので、ポンプ室床面に設置されていた地下の汚水ピットと連絡しているマンホール蓋を開けて地下の汚水ピットに流し込むことにした。マンホールの蓋を少し持ち上げて、溶断した配管を差込み、蓋の片側が65mm持ち上がった状態にして、Aが汚水を流し込む作業を行った。

10分程して、Bはマンホール近くの配管の架台アングルを切断しようとしてアセチレン溶接装置の吹管を近づけたとき、室内で爆発が起こって、ポンプ室内部にいた2人の作業員が火傷を負った。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 汚水ピットにメタンガスが滞留しており、マンホール蓋を開けたとき、メタンガスが排水ポンプ室内に流出してきたため、マンホール近辺に爆発混合気が形成されたこと。

2 ポンプ室内の換気が十分に行われておらず、また危険有害ガスの濃度を測定しない状況で、アセチレン溶断火炎を使用したこと。

3 ごみ処理施設など廃棄物処理設備においては、メタンガスが発生することが多く、その爆発危険性に関する安全意識に欠けていたこと。

4 作業を開始する前に作業手順が定めておらず、また危険が存在する箇所および災害の種類についての事前予測が行われていなかったこと。

5 元請と数次にわたる下請の混在作業で、統括安全管理が徹底していなかったこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 ごみ焼却施設など廃棄物処理設備の汚水ピット、汚水槽などにおいては、高濃度のメタンガスが発生するため、その付近で溶接・溶断作業を行うときは、十分な換気を行い、かつ、定期的に濃度測定を行い、メタンガスの濃度を爆発下限界の四分の一以下とすること。

2 高濃度のメタン、硫化水素など危険有害物質が流入する箇所が分かっている場合は、流入部の閉鎖など確実な流入防止の措置を講ずること。

3 メタン、硫化水素など有害ガスが発生するおそれのある場所で作業を行う場合は、事前に作業責任者を定め、作業の方法、手順を定めておくこと。

4 下請事業場を含む元請事業場の統括安全管理体制を確立し、安全管理を徹底すること。

リスクアセスメント、安全作業基準作成、安全衛生教育、現場の巡視などを実施し、安全思想の高揚を図る。

【業種】

機械器具設置工事業

【被害者数】

休業者数:2人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100835より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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