建設業の労災事例

ビルの高圧受変電設備の改修工事中に充電されていた断路器のブレードに触れ感電

   

【発生状況】

この災害は、ビルの電気設備の改修工事において発生したものである。

この工事は、約5か月かけてビル内にある高圧受変電設備(キュービクルタイプ)、非常用発電設備等のリニューアルを行うもので、建物全体の工事を請け負った建設会社から電気設備会社Aが一括して受注し、一般電気工事の作業を別の会社Bに発注したが、実際の作業の一部は工事応援という形で被災者の属する会社Cの3名が行っていた。

災害発生当日、被災者らは、前日に引き続き午前7時から一般電灯系について停電による作業を行い、この作業は午前中に終了した。午後からは午前の休憩のときにB社から当日の追加の作業として指示された「高圧発電引込盤の中に中央監視室用の信号ケーブルを引き込む」作業をB社の作業指揮者と被災者および同僚で行うことになった。

引き込み作業は、高圧発電引込盤(幅80cm,高さ230cm)の上方にあるラックから信号ケーブルを引込盤上の穴(直径10cm)に差し込み、それを下で引き込む方法で行われるものである。最初は同僚がラック上で、指揮者は断路器への接触防止用に取り付けてあったアクリル板を取り外して引込盤上のところで引き込む作業を行い、被災者は指揮者の後ろで作業を見ていた。

ところが、ケーブル8本を引き込んだところで、指揮者はケーブルが2本足りないことに気づいた。指揮者は被災者らに2本のケーブルの追加引き込みと、全ての引き込みが終わったところで止め具を用いて整線するよう指示し、「活きているかも知れないから注意するように」と言った後、地下2階で行われている他の作業箇所の巡視を行ってから地下1階の工事事務所に戻った。

残った2人は、2本のケーブルをラック伝いに配線した後、同僚が引き続いてラック上で、被災者が責任者の行っていたケーブルを引き込む作業を行っていた。同僚が2本目のケーブルを差し込んだ午後2時20分頃、突然ビル全体が停電となった。

このとき、被災者は、高圧発電引込盤の裏側にある一般電灯用の配電盤にもたれ掛るようにして倒れていた。そのため直ちに救出して病院に移送したが、2時間後に電撃症のため死亡が確認された。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 絶縁防護措置が行われていなかったこと

被災者が電撃を受けて死亡した直接的な原因は、充電状態にあつた断路器のブレードに接触したものと推定されるが、信号ケーブルをキュービクルタイプの高圧発電引込盤に差し込む作業の際、断路器への接触防止用のアクリル板を取り外したのに、断路器のブレード部分を絶縁用防具等により防護しなかった。

2 作業計画が明確に定められていなかったこと

災害は、当日の作業予定にはなかった信号ケーブルを高圧発電引込盤に引き込む作業で発生した。一連の作業計画の中でこの作業を停電で実施するのか、活線近接の作業で行うのかの計画が定められていなかった。

また、翌日の作業計画については、前日の午後に電気工事一式を請け負った会社からビルのリニューアル工事全体を請け負った建設会社に日報の形で提出するようになっていたが、形式的で計画の変更の手順等についての定めもなかった。

3 作業者が充電部分を認識しないまま作業を行ったこと

被災者は、信号ケーブルを高圧発電引込盤に引き込む作業を作業責任者の後を引き継いで行っていて被災した。その作業について特段の説明、指示を受けることなく、直前に見ていた動作を真似て作業を実施したもので、充電部分があることを認識していなかった。

4 安全管理が行われていなかったこと

電気設備に関する一連のリニューアル工事は、銀行に電気を供給していることから、全停電で行うことが難しく、必然的に活線近接作業が予測されていた。しかし、感電防止に関する安全管理等について関係会社間で十分な連絡調整を実施していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業計画を明確に定めること

既設の受変電設備の改修工事を行う場合、ビル全体を全停電で行うことが難しい場合も少なくないので、工事全体を通じた停電、一部停電の作業等の区分をあらかじめ検討し、その検討結果に基づく毎日の作業計画を明確に定め、関係作業者にその日の作業を開始する前(前日および当日)に周知徹底する。

2 停電の確認と充電部分を絶縁防護すること

電路を開路して電路またはその支持物の敷設、点検、修理等の作業を行う場合には、電路の電圧に適合した検電器具により停電を確認し、短絡接地を行う。(安衛則第339条)

また、断路器を開放しても、その片側が充電されている状態でその充電部分に接近して作業を行う必要がある場合には、充電部分に電路の電圧に適合した絶縁用防具を装着するか作業者に絶縁用保護具を着用させる。

3 作業マニュアルを定め周知すること

高圧または特別高圧の充電電路もしくは充電電路に近接してその支持物の点検修理等を行う場合には常に感電危険が伴うので、その業務に従事する者に対してあらかじめ特別教育を実施する。

4 作業指揮者を定める等の安全管理を実施すること

充電電路に近接して作業を行う場合等には、関係作業者に対し、作業を行う期間、作業の内容ならびに取り扱う電路およびこれに近接する電路の系統について周知するとともに、作業指揮者を定めて次の事項を実施させる。

(1) 作業者にあらかじめ作業の方法および順序を周知させ、かつ、作業を直接指揮すること

(2) 電路を開路して作業を行う場合には、電路の停電の状態および電路に用いた開閉器の施錠、通電禁止に関する標示、監視人の配置の状態等を確認した後に作業の着手を命ずること

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100817より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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送電線の接続箱を交換して復旧する作業中に誘導電圧で感電

   

【発生状況】

この災害は、電力会社の送電電路にある接続箱の交換工事において発生したものである。

工事は、発電所からの架空送電線を地下ケーブルに接続する箇所の接続箱(深さ2m、幅約1.8m、長さ7mのマンホール内にある)で、この接続箱に絶縁油の漏れが発見されたため、解体し新たな接続箱に交換することになった。

作業は、2日前にマンホール内の水抜き作業を行い、前日から接続箱の解体、交換作業が被災者の所属する工事会社の総勢15名で夜を撤して行われた。(うち6名は前日の夕刻に帰宅し、翌朝に徹夜組みと交代)災害発生当日の朝の段階では主な作業は終了していた。

災害発生当日の作業予定は、マンホール内の踏査(マンホール内が前の状態になっているかを目視調査する)と外していた回線の接続で、踏査は電力会社の担当者3名と工事会社の施工責任者が行った。

この踏査が終了し、発電所敷地内にある電力所で154KV送電線の復帰をすることになった。関係者が電力所に移動して、まずABC各相ごとに導体抵抗・絶縁抵抗の測定、静電容量の測定を行った。その結果が良好であったので、鉄塔のところに待機していた被災者らに停電を終了する作業を行うよう指示した。

この作業は、C相から順次接地線の接続、ジャンパー線の取り付け、接地線の取り外しという手順で行うもので、C相とB相は順調に終了した。最後にA相を行うため同僚の一人がはしごを支え、一人は架台上で待機し、被災者が接地線を持ってはしごを上っていたときに断路器の終端部(先端部)に顎が当たり、そのときA相に誘導電圧が生じていたため、被災者は感電死した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 誘導電圧に対する認識が不十分であったこと

災害が発生した電力所の鉄塔には、2回線の送電線が併設されていて、片側回線を停電しても併設された回線に電流が流れていると誘導電圧が発生するが、その確認が不十分であった。

今回は作業に先立って誘導電圧の測定を行い40Vという値を測定していた。この測定は鉄塔側が接地された状態で測定したため、架空線の誘導電圧の測定にはなっていなかったものと推定され、事故後に接地線を取り外して測定したところ、誘導電圧は1370Vであった。

2 停電等の確認方法が不十分であったこと

電力会社および被災者の会社の作業手順によれば、停電の確認は停電後1度だけ行えばよいことになっており、停電後の各作業ポイントで実施すること、測定の条件等については明確に定められていなかった。

とくに、今回の作業では、絶縁抵抗の測定のため、途中で鉄塔側の接地線を取り外しているのに、それに対応した停電状態の確認を実施していなかった。

3 作業方法が不適切であったこと

被災者が接地線の接続のためはしごを登って行ったときには、軍手をしただけの服装であり、近接した回線を含めて無電圧の状態であると錯覚していたものと推定される。

また、作業全体の指揮系統が必ずしも明確ではなく、接地線の接続作業に活線作業用装置を使用する等の検討も行われていなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 停電等の確認を適切に行うこと

開路した電路が高圧または特別高圧であるものについては、検電器具により停電を確認する。また、誤通電、他の電路からとの混触または他の電路からの誘導による感電危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地されていることを各作業のポイントにおいて確認することが必要である。(安衛則第339条)

また、このことは、作業手順のうえで明確に定めるとともに、作業開始前に関係作業者に周知徹底する。

2 接地線の取り付け作業方法を再検討すること

特別高圧活線近接作業を行う場合には、活線作業用装置を使用させる(安衛則第345条)こと、充電電路の活線作業で感電の危険がある場合には活線作業用器具を使用させるとともに、充電電圧に応じた身体の接近限界距離(電路が電圧154Vの場合は120cm)を保たせる(安衛則第344条)ことを作業者に周知徹底する。

なお、活線作業用装置については、充電電路の電圧に応じた適切なものを準備する(安衛則第348条)とともに、その日の使用開始前にひび、割れ、破れその他の損傷の有無および乾燥状態を点検する。(安衛則第352条)

3 作業間の連絡調整を適切に行うこと

送電線路およびその支持物の点検、修理等を電力会社と関係下請け会社の作業者が共同で作業を行う場合には、あらかじめ関係者で十分に打合せを行うとともに、作業指揮者を定め、当日の作業開始前に作業の方法、手順等を周知させるとともに、作業を直接指揮させる。(安衛則第350条)

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100819より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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